著:薬剤師 岡田憲人 プロフィール
監修:獣医師 森内利郎(神戸市アルファ獣医科病院 院長)
肝臓は、体内にある臓器の1つです。
人の場合は、肺の下(横隔膜の下)、腸の上に位置しています。
たくさんの働きを担っていることもあり、かなり大きな臓器で1kg~1.5kgくらいの重さがあります。
もちろん犬や猫にも肝臓があり、見た目はよく似ていて、働きや機能については人とほぼ一緒です。
肝臓の基礎知識
肝臓は人や犬猫などの哺乳類、鳥類や魚類、爬虫類にもみられる臓器です。
数百種類の働きを持つと言われ、体の健康バランスを絶妙に保ってくれています。
その複雑で多様な役割から、肝臓の代わりになる臓器はなく、機械に置き換えるようなことは不可能と言われています。
肝臓は、肝細胞と呼ばれる細胞で満たされています。
肝臓は数百種類の仕事をこなしていますが、細かくみていけば一つ一つの肝細胞の働きが集まって大きな仕事になっています。
たくさんの血管が集まっている
肝臓に入ってくる血液は、門脈と肝動脈と呼ばれる2つの血管から流れ込んできます。
そして肝静脈を通って、肝臓の外に送り出されます。
門脈は腸から吸収された栄養を多く含みますが、酸素があまり含まれません。
肝臓も呼吸する必要がありますから、もう一方の肝動脈を使って酸素を取り入れています。
肝臓の中では血管が細かく枝分かれしていて、血液は肝臓を構成している肝細胞をすり抜けるように流れます。
そのときに肝臓が作り出した栄養素を血液に乗せたり、逆に血液によって運ばれてきた老廃物を処理したりします。
胆管で胆嚢と腸に繋がっている
胆管とは、肝臓と胆嚢(たんのう)、そして小腸に繋がる管のことです。
肝臓で作り出された胆汁(たんじゅう)は、この胆管によって集められ、胆汁のストック場所である胆嚢に送り出されます。
胆管は最終的に腸に繋がり、胆汁で食べ物に含まれる脂質を吸収しやすくしたり、体内の老廃物を腸内に排泄します。
一般的に胆管といったときは、たいていは肝臓の外にある部分を指しています。
肝臓の中にある部分の胆管は、肝内胆管と呼ばれます。
再生能力が高い
肝臓は自己再生能力の高い臓器でもあります。
もし手術などで肝臓の一部を失ったとしても、(切除する大きさや場所によりますが)数ヶ月程度でもとに戻ってきます。
体中の毒や老廃物を集め、その処理を引き受ける肝臓はダメージを受けやすく、こうした再生能力が必要です。
もし再生能力が失くなってしまえば、肝臓は壊れる一方となります。
犬も猫も人間も、健康どころか生命を維持することも危うくなります。
ただし肝硬変などの病気で肝臓が線維化して硬くなってくると、だんだんと肝細胞が入れ替わる場所がなくなってきます。
そうなってくると徐々に再生能力は衰えてきます。
余力がある
肝臓は再生能力のみならず、かなりの余力を持った臓器です。
これは肝臓の予備能力とも言われ、人の場合では肝臓の実に7割を切除しても健康を保てるとされています。
体にとって肝臓が重要な臓器であるために、このような余力を持たされているのでしょう。
手術で肝臓を切除するだけでなく、薬や少量の有害物質を摂取してしまったときにも肝臓は全体的にダメージを受けますが、やはりこの余力のおかげで大きく健康を損なわずに済みます。
逆に言えば肝臓の障害は気が付きにくいということであり、「肝臓は沈黙の臓器」と呼ばれる理由にもなっています。
まとめ
肝臓が大きな臓器である理由として、たくさんの血液を処理する必要があったり、いざというときに備えて十分な余力をもたせているためだと考えることができます。
人もペットたちも、この肝臓のタフさに助けられているわけです。
感謝すると同時に、肝臓を癒やしてあげることも忘れないようにしてあげましょう。