愛犬が胆泥症と診断されたら、知っておいてほしいこと

2024年11月22日

胆のうと胆泥のエコー画像

愛犬のエコー検査で胆泥症と診断され、「基本的には胆泥症は治りません。」と言われた飼い主さんは少なくないと思います。

まず、一つのデータをそのままお見せします。

無症状で健康な4歳以上の犬77頭をエコーでスクリーニングしたところ、45頭に胆泥が確認された。この45頭を12ヶ月間追跡した結果、消失2%、減少19%、変化なし40%、増加29%、再発10%という転帰であった(DeMonaco et al., J Vet Intern Med, 2016)。

注:この77頭は無症状・健康と判断された一般の飼い犬です。無作為抽出による疫学調査ではなく、ある動物病院に来院した患者集団を対象にした研究のため、この割合がすべての犬に当てはまるとは言えません。ただし、症状のない犬の半数以上に胆泥が確認されたという事実は、胆泥が特別に珍しい所見ではないことを示しています。また「消失2%」は、無治療のまま自然に完全消失した割合であり、治療を行った場合の数字ではありません。

「胆泥は治りません」という説明は、この自然経過のデータに照らせば、間違いではありません。無治療で自然に消退することは稀だと報告されています。

一方で、一般的に処方されるウルソデオキシコール酸(ウルソ)についても、正直にお伝えしておきたいことがあります。犬の胆泥症に対してどの程度の割合で改善が見られるのか、実は定量的なデータがほとんど存在しません。獣医師の間でも「使ってはいるが、劇的に効いている感触はない」という声を聞くことが少なくありません。

つまり、胆泥症については「治療すれば治る」とも「何をしても無駄」とも言い切れない、エビデンスの手薄な領域だということです。

だからこそ、私たちは「これで治ります」という話をするつもりはありません。ここで伝えたいのは、標準治療にどんな限界があるかを知った上で、選択肢を検討する材料です。何を選ぶかは、飼い主さんとかかりつけの獣医師が決めることです。

症例の記録

以下は佐々木動物病院で記録された、生活習慣の見直しに取り組んだ症例です。効果を保証するものではなく、個体差が大きいことを前提に見てください。

胆泥症のエコー画像(佐々木動物病院 提供)

症例A 2021年4月:胆のう内の7割程度が胆泥で満たされている状態(白っぽく写っている部分が胆泥)

※GBの文字は胆のう(gallbladder)の意味

 

症例A 2022年2月:検査で大部分の胆泥が消失し、代わりに胆汁で満たされた。(黒い部分が胆汁)

 

10か月後のエコー検査で、ほぼ正常と言える状態に改善。胆嚢粘液嚢腫へ進行する可能性は低いと考えられ、胆のう摘出手術は不要となった。

同様の変化が見られた症例をもう少し紹介します。


 

症例B 2022年5月:胆のうの7割程度を胆泥が占めている。

 

症例B 2022年11月:胆泥がほとんど確認されない状態に変化。

 


 

症例C 2020年9月:胆のうの4割程度を胆泥が占めている状態。

 

症例C 2022年12月:胆泥はほぼ観察されない状態に変化。

 

同じ取り組みをすればすべての犬に同じ変化が起こるということではありません。食事内容・季節・自然経過など、複数の要因が同時に関わっている可能性があり、この変化を単一の要因だけに帰属させることはできません。

 

飼い主さんからいただいた改善の記録

メディネクスへのご相談をきっかけに取り組みを始めた飼い主さんからも、改善の報告をいただいています。

その中で、とてもわかりやすいものがあります。

左の写真(取り組み前):胆泥で完全に胆のうが埋まっている状態。胆のう位置もわかりにくい。

右の写真(取り組み後):ほとんどの胆泥が消失し、胆のうの輪郭が明瞭になった状態

飼い主様の許可を頂いております。同じ悩みを持つ方の参考になればとのことで、記録を提供してくださいました。この一例をもって効果を保証するものではない点、あらかじめご了承ください。

 

佐々木動物病院での経過

長野県飯田市にある佐々木動物病院の院長、佐々木将雄先生はもともと外科に強い先生です。

先生は胆泥症について、生活習慣を含む複数の要因が関与すると考えています。臨床の中で家庭でできるケアを取り入れるようになって以降、胆のう摘出手術の件数がゼロに減少しました(導入前は年間平均8件程度)。これは佐々木動物病院における記録であり、すべての病院・症例に当てはまることを示すものではありません。

先生が家庭でのケアの一つとして紹介しているのが、月桃(ゲットウ)由来の成分を用いた取り組みです。

 

月桃(ゲットウ)について

月桃(ゲットウ)は、沖縄をはじめとした亜熱帯地域に自生する大型の草です。古くから民間療法に用いられてきた植物で、近年では抗酸化・抗炎症に関する研究も行われています。

佐々木先生は、月桃から抽出したエキスをさらに発展させ、臨床の中で改良を重ねてきました。さまざまな薬との併用例の中で安全性も確認されています。

上記のエコー画像の犬たちも、このケアを取り入れています。補助的な位置づけではありますが、佐々木動物病院の臨床の中で継続的に使用されてきたものです。

ここで一つ、正直に申し上げておきます。月桃由来の成分について、胆泥症への効果を示した臨床試験のような強いエビデンスは、現時点ではありません。佐々木先生が臨床の中で継続的に使用してきた経過があるという段階のものであり、今後の症例の蓄積が必要な領域です。

 

佐々木動物病院とメディネクスについて

佐々木動物病院の外観

メディネクス株式会社の本社は、佐々木動物病院の中にあります。佐々木将雄先生にはメディネクスの顧問獣医師を務めていただいており、必要なときにいつでも情報交換できる環境にあります。

獣医師から直接、臨床の話を聞ける。獣医師の考え方を内側から知ることができる。その15年分の積み上げが、いまの相談対応の土台になっています。

 

 

一般的な治療について

胆泥症に対して一般的に処方されるのは、ウルソデオキシコール酸(ウルソ)とスパカールです。

これで治ると思っていませんか。違います。

私は薬剤師です。薬局にいた頃、ウルソを数十万錠単位で調剤してきました。その経験から言えることがあります。全員に効くわけではありません。キレの良い薬という実感も正直ほとんどありません。獣医師に聞いても「とりあえず使っているが、良く効いている感触はない」という声が返ってくることが少なくありません。

そもそもこの薬、胆泥症の治療薬として正式に承認されたものではありません。人の胆石治療から転用されている薬です。効くという確信があって処方されているわけではなく、他に選択肢がないから使われている、というのが実情に近いと思います。

低脂肪食にすれば良くなる、と考えていませんか。それも単純ではありません。胆のうは、食事によって分泌されるホルモン(コレシストキニン)の刺激で収縮します。脂肪を極端に減らせば、この刺激そのものが減ります。刺激が減れば、胆のうは収縮しなくなります。収縮しなければ、胆汁は流れずに滞留します。滞留すれば、胆泥はむしろ溜まりやすくなります。「脂質を控えれば良くなる」という単純な図式は、この一点だけでも崩れます。

では手術すれば解決するのか。それも一律には言えません。無症状の胆泥に対して手術まで踏み込むべきかどうかは、獣医療の現場でも意見が割れています。

つまり、薬も、食事制限も、手術も、それぞれに理論的な限界を抱えています。どれか一つが正解で、他が間違い、という単純な話ではありません。だからこそ、標準治療の限界を知った上で、選択肢を検討する必要があるのです。

 

なぜこの情報を出すのか

「胆泥症は治らない」と言われたとき、それ以上の説明を受けられなかった、という声を飼い主さんから聞くことがあります。標準治療のエビデンスがどの程度のものか、他にどんな選択肢が検討されているか、その情報が十分に共有されないまま診察が終わってしまう、ということが起きているようです。

私たちがこの記録を公開するのは、「これが正解です」と示すためではありません。標準治療にも限界があること、代替として検討されているものにも限界があることを、飼い主さん自身が知った上で、かかりつけの獣医師と相談しながら選べるようにするためです。

すべてを治せるとは思っていません。個々の犬によって体質も状況も異なり、変化までの時間も一律ではありません。ただ、こうした記録を必要としている飼い主さんもいると考え、ここに残しています。

具体的な内容について知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。LINE・またはお電話でお伝えできます。私、メディネクスの岡田が対応します。

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胆泥症をしっかり理解したい方へ

胆泥のメカニズムをしっかり学びたい方は、ぜひこのまま読み続けてください。

胆泥症の治療、そしてケアにおいて必ず役立つ知識となるでしょう。

胆汁とは

胆汁は肝臓で産生される消化液です。主な役割は脂質の消化・吸収を助けることですが、それだけではありません。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収、腸内環境の維持、老廃物や毒素の排泄にも関わっています。胆汁がなければ、体は脂質をうまく扱えなくなります。

胆のうの役割・なぜ濃縮するのか

肝臓で作られた胆汁は、そのままでは薄すぎて消化液としての効力が低い状態です。胆のうはこの薄い胆汁を貯蔵しながら、水分を吸収して5〜10倍程度に濃縮します。濃縮することで、食事のタイミングに合わせて少量でも効果的に働ける消化液として仕上げるわけです。

胆のう収縮のメカニズム

食事をすると、小腸からコレシストキニン(CCK)というホルモンが分泌されます。これが胆のうに「収縮せよ」というシグナルを送り、濃縮された胆汁が十二指腸へと放出されます。このタイミングで脂質の消化が始まります。

コレシストキニンは食事内容によって分泌量が変わります。つまり何を食べるかが、胆のうの動きに直接影響しているということです。

腸肝循環(エンテロヘパティックサーキュレーション)

十二指腸に放出された胆汁酸は、小腸で脂肪の消化を助けた後、回腸末端で約95%が再吸収されます。その後、門脈を通って肝臓に戻り、再び胆汁として利用されます。この「胆汁酸のリサイクル」を腸肝循環と呼びます。

健康な状態では、この循環がスムーズに機能しています。胆汁酸は1日に6〜10回この循環を繰り返すとも言われています。

胆汁は消化液であり、排泄経路でもある

胆汁にはビリルビンという物質が含まれています。ビリルビンは赤血球が壊れる際に生じる老廃物で、肝臓で処理されたのち胆汁に混ぜて排泄されます。腸内細菌によって分解され、最終的に便の色のもとになります。

胆汁酸がリサイクルを目的とするのに対し、ビリルビンは排泄を目的としています。つまり胆汁は消化液であると同時に、体の排泄経路でもあります。

ここで一つ、臨床で観察されていることをお伝えします。胆泥が改善するとき、緑色の便が出ることがあります。溜まっていた胆汁が流れ出したサインである可能性があります。緑の便を見て驚く飼い主さんは多いのですが、むしろ改善の兆候として捉えてほしいのです。

では緑の便はずっと続くのでしょうか。答えはノーです。腸内細菌が胆汁に慣れてくれば、健康な状態と同様に便は茶色くなってきます。また胆泥は胆汁の濃縮体ですので、最初は緑が濃く出ることがありますが、大部分が排泄されてしまえば次第に薄まっていきます。

胆泥化のメカニズム・悪循環

胆汁が過度に濃縮されると胆泥化が進みます。さらに注目すべきは胆のう自身の防御反応です。胆泥には毒性があるため、胆のうは自らを守るためにムチンなどの粘膜物質を多く分泌するようになります。しかしこれが皮肉にも胆泥の粘度をさらに高め、排出をより困難にさせると考えられています。

つまり放置すればするほど、胆泥は排出されにくい状態へと進んでいく可能性があります。

胆嚢粘液嚢腫への進行

胆泥症が進行した場合、一部が胆嚢粘液嚢腫に移行する可能性が指摘されています。先述のムチンの過剰分泌との関連も考えられています。

胆嚢粘液嚢腫は胆泥症とは様相が異なり、胆のう破裂のリスクを伴います。つまり警戒グレードが一気に高くなるわけです。実際に胆のうが破裂してしまえば、内容物が腹腔内に漏れ出して、ときに命に関わります。不測の破裂を防ぐために、一般的には胆のう摘出手術が推奨されます。

だからこそ、胆泥症の段階で放置しないことが重要です。

 

さらに詳しく学びたい方はこちらもどうぞ
【犬の胆泥症まとめ】原因から対策ケアまで

 

胆泥症はあきらめる病気ではありません

最後に、「胆泥症は治らない」という言葉を鵜呑みにする必要はありません。取り組み方次第で、改善できる可能性があります。

見て頂いたエコー画像は、佐々木動物病院にある大量のデータの一部だけです。私の経験からも再現性はあります。もちろん無責任に必ずとは申し上げることはできませんが、いまの治療に疑問を感じている方、もう少し詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。

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