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冬の乾燥と犬猫の脱水・発作リスク:「隠れ脱水」を防ぐために

「冬になってから、うちの犬(猫)がなんだか元気がない…」
「震えたり発作みたいな症状が出たけど、てんかん?」

そんな症状の原因として、「隠れ脱水」が関係しているかもしれません。
特に、不感蒸泄(ふかんじょうせつ)と呼ばれる、無自覚に失われる水分が大きく影響します。

本記事では、冬の乾燥が犬や猫の健康に与える影響と、適切な湿度管理・水分補給の方法を詳しく解説します。

冬の脱水はなぜ起こる?

不感蒸泄(ふかんじょうせつ)による水分損失

犬や猫は汗をほとんどかかず、体温調節のほとんどを呼吸で行います。

このとき、不感蒸泄(皮膚や呼吸から無意識に失われる水分)によって、特に乾燥した環境では水分喪失が加速します。

例えば、人間でも安静時に1日約500mLの水分を呼吸で失うとされており、犬や猫も同様に影響を受けます。
湿度20%以下の乾燥した環境では、この水分損失がさらに増え、気づかぬうちに脱水が進行するのです。

補足:肺の冷却システムは「気化熱+熱交換(対流)」の両方を利用している。

  1. 外気(冷たい空気)を吸い込む → 肺胞の血管と熱交換(対流)
    冷たい空気が肺に入り、温かい血液と接触することで熱が逃げる。
  2. 粘膜の水分を蒸発(気化熱) → 冷却効率をアップ
    さらに、肺の粘膜表面の水分が蒸発(不感蒸泄)することで、熱を奪いやすくなる。

つまり、単なる「気化熱冷却」ではなく、「冷たい空気との熱交換+気化熱」の組み合わせによって、効率的に体温を下げている。
特に乾燥した環境では、蒸発量が増えすぎることで体内の水分損失量が増加し、脱水が進行しやすくなる。

暖房と湿度の関係

「ストーブを使うと湿度が下がる」とよく言われますが、実際には暖房の種類によって異なります。

  • エアコン・電気ストーブ → 空気を暖めるだけで、水分を供給しないため相対湿度が大きく低下
  • 灯油・ガスストーブ → 燃焼時に水蒸気を発生するが、換気をすると結果的に湿度が下がることがある

例えば、室温10℃・湿度50%の部屋を20℃に暖めると、相対湿度は約28%まで低下します。
灯油は1リットル燃やすと、空気中の酸素と結合することで、だいたい1リットルの水が発生するのですが、実際には部屋の湿度を思ったほど上げないでしょう。
結局は暖房によって、乾燥が進み、犬や猫の体から水分が奪われやすくなります。

補足:電気カーペット、電気毛布による脱水
直接身体を温める効率的な暖房器具ではありますが、人でもそれらを利用して寝たときに喉がカラカラになることがあります。
とくに体毛で覆われたペットたちは、腹部から受け取った熱を呼吸で逃がそうとして、水の損失量が増加する可能性があります。
就寝中は水分補給をしないために、気をつけておいたほうが良いでしょう。

水を飲む量が減る

寒いと喉の渇きを感じにくくなり、犬や猫が自主的に水を飲む量が減ります。

「ドライフードに水を混ぜる」という方法もありますが、食事から水分を摂ると、普段の飲水量が減る可能性があるため、必ずしも良い方法とは限りません。

しかし、スープを活用する方法は有効です。

  • 犬・猫用の手作りスープ(野菜・鶏肉を煮出したもの)を食事に加える
  • スープは喉の渇きではなく、気持ちの安らぎで飲む(人と同じ)
  • 温かいスープは嗜好性が高く、飲水量を増やすのに役立つ

冬の脱水がもたらす危険:発作や体調悪化のリスク

脱水は軽度でも体にさまざまな影響を与えます。特に高齢の犬・猫では命に関わる可能性もあります。
高齢動物は若い頃に比べて体内の水分量が少なくなっており、そもそも脱水に陥るリスクが高いと言えます。

  • 血液の粘度上昇 → 循環不良、肝臓や腎臓の負担増加、血栓症、脳梗塞
  • 電解質バランスの乱れ → 神経の興奮性変化、発作のリスク増加
  • 胆汁うっ滞・肝機能低下 → ALT・ビリルビン値の上昇
  • 尿量、回数の減少 → 膀胱炎や結石のリスク
  • 便の水分量減少 → 便が固くなり便秘、肛門裂傷(裂肛)

冬場に「突然発作が増えた」「高齢犬・猫の体調が急に悪くなった」というケースでは、低湿度による脱水と電解質バランスの乱れが原因の可能性があります。

検査で赤血球数が多い場合は脱水の可能性があります。

脱水が進むと血栓症(血の塊ができる病気)のリスクが高まる。
血液の水分が減ることで粘度が上がり、血流が悪化。特に高齢の犬や猫では、**脳梗塞や血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)**の危険性が増す。
脳梗塞が起きると、突然のふらつき、意識障害、歩行困難などの症状が現れ、命に関わる可能性がある。
「発作だと思ったら実は血栓症だった」というケースもありえます。

他に、「安定していたALTやALPが急に跳ね上がった」「赤血球数やアルブミンが高くなってきた」「鼻や肉球がやけにカサカサしてる」「尿の色が濃い」などは上位の原因に脱水があるかもしれません。
点滴治療や投薬が良いかはわかりませんが、セルフケアの範疇なら対策しておいて損をすることはないでしょう。

室内の湿度管理:6畳の部屋ではどれくらい加湿が必要?

  • 快適な湿度はだいたい50%
  • 6畳(約10㎡)の部屋で湿度を50%に保つには、半日で2リットルくらいの加湿が必要かもしれない。

広いリビングでは、実は相当量の加湿が必要だと言えます。

加湿方法の比較

  • 濡れタオルを干す → 1枚あたり50~100mL程度の蒸発量(効果は限定的)
  • 水を入れたコップを置く → 1日100~200mL程度(部屋全体の加湿には不十分)
  • 加湿器(気化式・超音波式) → 1時間あたり200~500mLの加湿が可能(推奨)

冬場、ペットがいる部屋では積極的に加湿器を使ったほうが良いでしょう。

 

湿度計の重要性:測定がズレているかも?

ペットが過ごす部屋では湿度計を使用しましょう

湿度計の種類と特徴

毛髪湿度計 → 人の毛や合成繊維が湿度によって伸縮する仕組み(精度は中程度)
乾湿計(アナログ式) → 乾球と湿球の温度差から湿度を計算(信頼性が高いが管理が必要)
電気式(デジタル湿度計) → 高分子フィルムやセラミックを利用(現在主流、安価で扱いやすい)

注意点:湿度計は経年劣化や個体差によりズレが生じることがあります。
故障もしますから、たまに「1つの湿度計だけを見るのではなく、複数の湿度計を比較してズレを確認する」ことです。
100円ショップでも手に入りますが、あまり精度を期待してはいけません。
部屋の湿度が60%になったあたりから結露してきますので、それも目安になります。

まとめ:冬こそ水分補給と湿度管理を徹底しよう!

  • 湿度40~60%をキープ(特に50%前後を推奨)
  • 加湿器を使い、適切な水分補給を心がける
  • スープなどを活用し、飲水量を増やす
  • 緊急時は動物病院で点滴を受ける

乾燥対策を徹底し、愛犬・愛猫の健康を守りましょう!

 


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