著:薬剤師 岡田憲人 プロフィール
あきらかに体調がよくなったリンパ腫の猫(9歳)を報告いたします。
肝機能の異常が見つかり、肝臓の細胞診によりリンパ腫が強く疑われた症例です。
飼い主さまは抗がん剤治療を選択せず、獣医師に奨められてステロイドだけを使用しています。
そして自宅にてサプリメント(冬虫夏草特殊培養物)(SPF100%プラセンタ配合粒)を健康サポートとして与えています。
このページの資料データは、モニターとして協力していただいている飼い主さまから提供していただきました。
公開して猫のリンパ腫を心配していらっしゃる方々に広めることを、快く了承していただきました。
これまでの治療経過
上記は肝臓の細胞診の診断書です。
診断は「LGL Lymphoma(中細胞型、上皮向性)が第一に考えられる」です。
※診断医名と所見・コメント欄は転載の制限があるために伏せています。
LGLリンパ腫は、非常に悪性度の高いリンパ腫であり、一般的には抗がん剤治療を施しても回復はほとんど期待できません。
ご相談を頂いた当初の体調は極めて不良で、肝臓ががん細胞に侵されているためか肝機能の数値は軒並み異常を示していました。
肝臓の血液検査値の推移
検査項目 | 初診時 | 2日目 | 5日目 | 8日目 | 13日目 | 32日目 |
A病院 | B病院 | C病院 | ||||
GOT
AST |
400 | 321 | 622 | 405 | 1000以上 | 269 |
GPT ALT |
1000以上 | 1000以上 | 1000以上 | 測定 不可 |
1000以上 | 1000以上 |
GGT | 39 | 37 | - | 18 | 65 | 19 |
ALP | 1374 | 1383 | - | 1269 | 3500以上 | 578 |
TBIL ビリルビン |
9.1 | 9.6 | 11.7 | 9.2 | 9.9 | 0.6 |
ALB アルブミン |
3.1 | 2.7 | 2.7 | 2.3 | 2.5 | 2.7 |
BUN 尿素窒素 |
12.2 | 9.8 | - | 9 | 12 | 18.9 |
治療など | 胆管炎を疑う 抗生物質など |
細菌性胆管肝炎を疑う 経鼻カテーテルで栄養 11日目ステロイド開始 |
LGLリンパ腫と診断 サプリメント開始 14日目ステロイド増量 |
ビリルビンとALPの異常な高さは、胆道系に何かトラブルがあり胆汁がうまく排泄されていない可能性を示します。
逆流した胆汁が肝臓にダメージを与え、GPT(ALT)が高くなっているのでしょう。
ALBやBUNは肝臓で作られる物質ですから、低値は肝臓が働かなくなってきていることを表します。
13日目に数値はさらに悪化し、ステロイドの増量とサプリメントを追加しました。
その19日後、GPTはまだ高いものの他の数値は軒並み改善しています。
GPTは測定できないほど高かったため、もし下がってきていてもまだ変化がわかりません。
とくにビリルビンの改善が著しく、猫の体調が一気に改善したことと関係があるでしょう。
自ら食事を口にするようになりました。
※経鼻カテーテルはサプリメントを与えやすいので残しています。
猫の体調が改善していく
飼い主さまが記録していたご愛猫の写真です。
短期間でみるみる体調が良くなっていく様子が伝わってきます。
当初の様子です。
毛並みが悪く、目にあまり力が感じられません。
経鼻チューブを挿入しています。
黒い糸はチューブを固定するためのものです。
5日目です。
このころすでに、だるさはずいぶんと軽減していたようです。
8日目は外で撮影してくれました。
まだまだ本調子ではないとのことでしたが、もう不快感はなさそうです。
11日目の様子。
眼がとてもきれいで、力を感じます。
口から食事ができるまでに回復しています。
経鼻チューブ残してありますが、ストレスを減らすためにいずれ外したほうが良いでしょう。
14日目の様子です。
このあとトラクター?の屋根を専有しようと、隣の猫を追い出してしまったそうです。
その後もどんどん調子を取り戻しており、散歩に連れ出すと飼い主さまの手から飛び出してしまうほどの回復ぶりです。
寛解しているのは間違いないと思いますが、完治かどうかは判断ができないために、まだ油断はできません。
ただ、私の知っているパターンからすると、このネコさんは完治に持ち込める気がします。
LGLリンパ腫は完治しないというのが一般的な常識のようですが、それは一般的な治療だけを施した場合の話です。
この飼い主さまにお願いしたこと
ご愛猫がリンパ腫だとわかったとき、飼い主さまは抗がん剤治療を選択せず、ステロイド治療を選びました。
まずはそれが良い選択であり、私も同じ考えだとお伝えしました。
当時は口から食事を摂れないほど衰弱し、肝機能もひどく悪化しており、日に日に悪くなっている状況でした。
もしその状態で抗がん剤治療を開始していたら、そこで終わりを迎えていたように思います。
ステロイド治療だけでLGLリンパ腫を抑えることは無理だということは、獣医師から言われていたそうです。
私も同意見であったため、ただちに食事療法と免疫改善の取り組みを開始するように提案いたしました。
当時は口から食事が摂れず、経鼻チューブから市販の流動食を入れている状態です。
食事療法は後回しにして、チューブから入れられるサプリメントで健康サポートしていくことにしました。
その後、体調が戻り経鼻チューブを外すことができたため、いまは口からサプリメントを与えています。
味を嫌がる様子もなさそうです。
飼い主さまの愛情が免疫力を向上させる
リンパ腫を完全に抑えこむためには、免疫力を高めるための「接し方」も重要です。
とても科学的であり、有効な方法ですから、相談をいただくみなさまには必ずアドバイスしています。
この飼い主さまは、ご愛猫がリンパ腫だとわかってから、とても良い接し方をしました。
あふれる愛情が、相談の電話越しに伝わってきました。
免疫力というものはとても気持ちに左右されやすく、基本的に楽しかったり、心地良かったりすると向上します。
逆に不安になったり、不快感があると働きがどんどん悪くなっていきます。
猫の感情を直接コントロールするとなると難しいのですが、間接的にコントロールするのでしたら意外と簡単です。
猫が持っている、飼い主さまの心を読み取る能力を利用するのです。
もし飼い主さまがイライラしていたり、泣いていたり、悩んでいたりすれば、猫は不安になります。
逆に飼い主さまが楽しそうで機嫌がいいとき、猫は心地良くなります。
また「もうどうせダメだ」「早く楽になったほうが良いのではないか」という飼い主さまの諦めは、何となく猫に伝わります。
ましてや何年も連れ添った猫でしたら、簡単にバレてしまいます。
猫に「私はもうダメなのかな」と思わせた途端、免疫の働きは低下するでしょう。
「はやく治って、またご主人さまと遊びたいな」と思わせることが重要です。
「気持ちで治るなら医者はいらない」とは、よく否定的な人が言うセリフですが、実際には半分くらいの病気は医者いらずで治せるように思います。
逆に医者が治せない病気は山ほどあります。
気持ちは本当に重要であり、リンパ腫には抗がん剤治療しかないという考えに私は疑問を持ちます。
まず免疫の大切さを理解し、前向きな気持で免疫改善に取り組むことです。
もちろんリンパ腫と言われてショックを受けない飼い主さまは一人もいらっしゃいません。
ですが、いくら悲しんでも、たくさんの涙を流しても、治療効果を下げることはあれど、治りやすくなることはありません。
何をどうしたら良いかわからないというときは、どうぞ連絡してください。
相談のスタイルとしてはまず状況をお聞きし、みなさんの状況に応じた個別アドバイスを心がけています。
ステロイド増量にも関わらず肝機能改善
この猫さんはリンパ腫とわかってから大量のステロイドを投与しています。
普通ならばさらに肝機能が悪化するはずですが、むしろ大幅な改善が見られています。
一般的には、このように発生する肝機能低下を防ぐことはできず、この猫は異例のケースと言えるでしょう。
ちなみに肝臓薬にはいくつもの種類がありますが、正直なところ良く効くものはあまりないように思います。
お時間のある方は、こちらの記事をご参照ください。