愛犬のエコー検査で「胆泥症」と診断された時、どのように対応したら良いかわからず不安に思う飼い主さんも多いでしょう。
胆泥症は命に関わる病気ではありませんが、放置するのはあまり望ましくありません。胆泥が良くないと言うよりも、胆泥を増やすような生活習慣に問題があると考えられるためです。
まれであり関連性があるとは言えませんが、胆嚢粘液嚢腫へと進展している子もいて、そうなるとたいていの動物病院は外科手術を提案してきます。
実際に飼い主様へのヒアリングからは、胆泥ができる背景に食生活や生活環境、ストレス、腸内環境の問題などが影響していることが多いようです。
この記事では、胆泥症の原因や影響を詳しく解説し、実際に改善した犬のエコー写真も交えながら、すこし具体的なケア方法をご紹介します。
なお一般的でマニュアル的な方法と異なる部分があります。ご承知ください。
胆泥症とは?
胆泥症とは、胆嚢内に「胆泥」という泥状の胆汁が溜まる状態を指します。胆泥は、胆汁が十分に流れないことで発生します。胆汁は肝臓で作られ、消化を助ける役割を担いますが、この流れが滞ると胆嚢内で胆汁が異常に濃縮され、粘度が高くなり胆泥が形成される、そんなイメージです。
胆泥症は多くの場合、無症状で進行するため、エコー検査で偶然発見されることがほとんどでしょう。一般的には以下のような犬では胆泥が見つかりやすいとされています。※あくまで一般的な話であり、私の考え方とは違う部分があります。
- 中高齢の犬
- 食事のバランスが偏っている犬
- 運動不足の犬
- 良質なタンパクが足りない?(ササミが良い?)
- 油の摂りすぎ?
- BCAAが足りない??
- おやつがいけない??
胆泥症の原因
胆泥症の原因は多岐にわたります。さらに言えば体の仕組みは複雑であり、胆嚢の様子や検査値ばかり見ていても解決しません。ちなみに肝臓が悪いことは胆泥の直接原因とはなりにくいでしょう。そのうえ考えられることを軽く紹介します。
1. 食事のバランス
極端な脂質制限、糖質制限、腸内環境を無視した食事(タンパク質過多)は高リスクだと思います。
ちなみに脂肪分は胆汁の分泌を刺激します。脂肪を極端に制限することは自然の摂理には逆らっているとも言え、実際に逆効果になっていた場合もあります。
2. ストレス
ストレスは、免疫低下、脳腸相関による腸内環境悪化に繋がります。健康相談でヒアリングしていると愛犬のストレス要因を正しく把握できてる飼い主さんは少ないと感じます。そもそもメンタル管理が胆泥に関わると考えている飼い主さんがあまりいません。
3. 腸内環境の悪化
腸内環境が悪いことが、胆管閉塞から胆泥症という流れになりやすくすると考えています。最近流行りの糖質制限や肉をたくさん摂るほど健康になるという話が胆泥を増やしているようにも感じます。
4. 免疫力の低下
免疫力が低下すると、やはり胆管閉塞からの胆泥発生に繋がります。
5. 医薬品
皮膚治療などで多用される免疫抑制剤、腸内の細菌バランスを崩す抗生剤は影響があるように思います。抗コリン作用を持つ抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤の常用、胃のPhを上げる胃薬も関わるかもしれません。この場合の胆泥は治療によって生み出された医原病と見なすこともできますが、多くの飼い主さんが見逃しています。
胆泥症による健康問題
胆泥症そのものが直接的なリスクを引き起こすわけではありませんが、次のような健康問題につながることがあります。
1. 脂溶性ビタミンの吸収低下
胆汁は脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収に不可欠です。胆泥症で胆汁の流れが滞ると、これらのビタミンの吸収が妨げられ、健康全般に影響を与える可能性があります。
2. 消化不良
胆汁は脂肪を消化するために必要な役割を果たします。胆泥が原因で胆汁が流れにくくなると、脂肪の消化が不完全になり、体調不良やエネルギー不足を招くことがあります。
3. 胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)
はっきりわかりませんが、胆嚢粘液嚢腫に進展する可能性があります。治療困難となり外科手術による胆嚢全摘をする犬がいます。
エコー検査でわかる胆泥症の進行
胆泥症の診断にはエコー検査が不可欠です。エコー波の特性を知ると、胆泥の見え方をより理解できます。
エコー波の特性
エコー検査では、エコー波が体内の組織に当たると、その密度に応じて波が反射したり透過したりします。具体的には:
- 固体(胆泥や組織):エコー波を反射するため、白く映ります。
- 液体(胆汁や血液):エコー波を透過するため、黒く映ります。
この特性により、胆泥症の胆嚢は、胆泥が白く映り、胆汁が黒く映ることで診断されます。
胆泥の進行とエコー画像の特徴
胆泥の進行具合によって、エコー写真の見え方が異なります:
- 軽度:胆嚢の底に三日月型に白い胆泥が沈む
- 中程度:胆泥が増え、半月型に広がる
- 重度:胆泥が胆嚢全体を埋め尽くし、満月型に見える
こうした特徴は、胆泥の量や状態を把握する手がかりになります。
改善前と改善後のエコー写真
ここで、実際に胆泥症を改善した犬のエコー写真をご紹介します。
改善前:胆泥が見られる状態
このエコー写真では、胆嚢の底に白く映った胆泥が確認できます。これは胆汁の滞りが進行し、胆泥が形成された状態です。
改善後:胆泥が消えた状態
2ヶ月半後に撮影したエコー写真では、胆泥が完全に消え、胆嚢が黒く映っています。胆汁がスムーズに流れ、健康な状態に戻ったことがわかります。
胆泥症の改善方法
胆泥症を改善するためには、次のような取り組みが効果的です。
1. 腸内環境を整える
腸内環境を整えることが、胆汁の流れを促進するひとつの鍵となります。納豆は腸内環境の改善に優れた食品です。さらに美味しいことがストレス解消にもなるため、サプリメントよりも優位性を発揮すると考えられます。
2. 食事の見直し
胆汁の流れを促進するためには、次のような食事が有効です:
- 脂質を適度に摂取する:極端な低脂肪ではなく、適度な脂質を摂り胆嚢の自然な収縮を促す。
- 発酵食品を追加する:納豆などの発酵食品を与える。(乳製品のヨーグルトは別の観点からあまりお勧めしていません)
3. 月桃を配合した混合水
月桃を配合した混合水は、胆汁の流れをサポートし、胆泥の解消を助ける効果が期待できます。日常的に飲み水として与えるだけで、手軽にケアを行えます。
4. ストレスの軽減
ストレスを回避するというよりも解消するのが良いでしょう。犬によっては適切な運動や穏やかな生活環境は良いかもしれませんが、一律に良い対策になるとは言えません。まずは「うちの犬の本当のストレスが何であるか?」を知らないと、的はずれな対策を打つことになりかねません。
飼い主さんへのメッセージ
胆泥症は適切なケアを行うことで十分改善が期待できます。足繁く病院に通い、何度もエコーを受けて、効いているか効いていないかわからない薬を飲み続けることだけが答えではありません。もし愛犬が胆泥症で困っている場合は、ぜひ気軽にご相談ください。初回は電話相談がおすすめです。なぜならばそれぞれ異なる食事内容や服用中の薬、生活環境、もっと言えば味の好み、飼い主さんの希望などを伺って、その子にあった方法、続けられそうなアドバイスをしたいからです。チャットでの相談もおすすめです。メールよりもはるかにヒアリングしやすいです。
おわりに
胆泥症は、その子にあった適切なケアを行えば改善を狙えます。「いまの治療で大丈夫なのか?」「いったいこの薬は効いているのだろうか?」そうした疑問があれば、一度ご相談ください。そしてセルフケアを成功させるためには少し基礎知識もあったほうが絶対に良いです。ちなみに私が考える本来の健康とは「病院いらず薬いらず」の状態です。同じ目標の飼い主さんには全力でサポートさせて頂きます!