著:薬剤師 岡田憲人 プロフィール
肝臓に悪い薬は意外に多くあります。
薬物を体から排泄するとき中心的な役割を担っているのが肝臓ですから、程度の差こそあれ、ほとんどの薬は肝臓にダメージを与えるとも言えるでしょう。
特に気をつけたい、肝機能障害を引き起こす4つの薬
肝機能障害の副作用をもつ薬の中でも、特に気をつけるべき薬があります。
ここでは4つの薬をピックアップして紹介します。
抗がん剤
ほとんどの抗がん剤は当たり前のように肝臓を壊し、肝機能障害を引き起こします。
そのため抗がん剤治療中は、頻繁な血液検査で肝臓の壊れ具合をチェックする必要があります。
もし肝臓が悲鳴をあげていることに気づかずに抗がん剤治療を続けてしまうと、副作用死に至る可能性が急激に高まるために危険です。
抗がん剤は有効量~中毒量~致死量の差が極めて少ない薬剤であるため、できるだけ早く抗がん剤を体外に排泄する必要があります。
そのときに中心的に働いてくれるのが肝臓なのです。
全身に広がった抗がん剤は肝臓に集められ、その濃縮された毒性によって肝臓の細胞は死んでしまいます。
抗がん剤治療を続けていて急にGPTやGGTが跳ね上がるとき、それは大量死した肝臓細胞から肝酵素が血中に漏れ出している状態であり、つまり治療の限界を示しています。
なお一般的な肝臓病薬では、とてもではありませんが抗がん剤による肝障害に対処できません。
ステロイド剤
ステロイドは動物医療においてとても身近な薬であると同時に、肝臓にダメージを与える代表的な薬剤です。
プレドニンやプレドニゾロンといった名称のステロイドがメジャーです。
ステロイドは炎症を抑える抗炎症作用が高く、また免疫抑制剤としても優秀な薬剤です。
食欲不振からアレルギー治療、リンパ腫などのがん治療といった幅広いシーンで多用されています。
ステロイドによる肝臓障害はジワジワとゆっくり進行するイメージです。
数回飲んだだけで大量の肝臓細胞が壊れてしまうことはまずありません。
漫然と続けている場合は、他の治療に切り替えられないか検討したほうが良いかもしれません。
肝機能低下だけでなく、免疫まで低下してしまう心配があるためです。
たとえばオゾン療法という治療法は、ステロイドを減らしたいときにも使えるでしょう。
痛み止め、風邪薬
犬や猫にはあまり風邪薬や鎮痛剤を使いません。
それは劇症肝炎のような、急激な薬物性肝障害を引き起こすことが稀にあるためです。
私たち人間用の風邪薬や痛み止めは、犬や猫に与えないようにしましょう。
危ないのはテーブルの上に薬を出しっぱなしにしていたり、床に落として行方不明になった薬を食べてしまう、誤飲による事故です。
もし誤飲してしまったときは、念のために動物病院で血液検査を受けたほうが良いと思います。
抗真菌薬(抗カビ剤)
代表的な薬剤名は、イトリゾール(イトラコナゾール)や、ケトコナゾールです。
人間の場合は水虫薬として多用される薬剤で、これを犬猫用の場合はマラセチア症やカンジダ症などの真菌感染症に使っています。
治療が長期間に及ぶことも多いので、数週間飲み続けるのであれば血液検査で肝臓の数値をチェックしておくべきです。
病気が皮膚にとどまるときは、抗真菌薬入りの外用シャンプーをメインにすることで内服量を減らし、肝臓のダメージを軽減することができます。
薬剤性肝障害を治療するために
壊れた肝臓を治療するとき、もっとも大切なことは原因の除去となりますが、いきなり薬を止めたり減量するといった選択はできないかもしれません。
あきらかに薬の効果が出ているとき、軽度の副作用には目をつぶらなくてはならないときもあります。
ただそのようなときでも、肝臓再生のために自宅で取り組める対策があります。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、肝臓は毎日少しずつ壊れ、毎日少しずつ再生していく臓器です。
再生スピードを高めるアイデアはいくつかありますので、お時間のある方はこちらのページもご参照ください。
肝臓を健康に導く新しいアイデア
肝臓を健康にしたいときに試していただきたいアイデアがあります。
食事の工夫やサプリメントを上手に使っていく方法は、安全性が高いだけでなく、実際に結果につなげている動物病院もあります。
グラフ:動物病院によるサプリメントの健康サポート力評価
とくに薬や療養食を何ヶ月も続けているのに状況が良くならないとき、ぜひ参考にしていただきたく存じます。
もちろん予防にも使えるアイデアです。