著:薬剤師 岡田憲人 プロフィール
このページでは、ご愛犬ご愛猫の肝臓を健康に導くための知識、その方法をお伝えいたします。
【基礎知識】肝臓とは
肝臓は体内で最も大きな内臓です。
主に次のような重要な仕事を担います。
- 体に入ってきた毒や、老廃物を分解・代謝する
- 腸から吸収した栄養からエネルギーをつくりだす
他にも肝臓の働きは数百あると言われ、動物の命や健康を守る、まさに「肝心要の臓器」です。
【重要】肝臓は再生する臓器
肝臓は身体の毒を集め分解する臓器であるために、その毒によって自らがダメージを受けやすく、毎日少しずつ壊れてしまいます。
それでも肝臓が機能を失わないのは、自分自身を修復する「自己再生」の能力が与えられているためです。
この「自己再生」による修復のスピードは、生活環境によって変動すると考えられるため、アプローチ方法によっては改善を目指せます。
肝臓が悪くなる理由
肝臓が壊れるスピードに対して、修復スピード追いつかなくなることがあります。
その状況が続いた結果として、肝臓が悪くなっていくと考えることができます。
ゆっくりと進む慢性肝炎などに対して、急激なものは急性肝炎と呼ばれます。
その原因としては、添加物の摂り過ぎ、医薬品の副作用、ウイルス感染、毒性物質の摂取などが挙げられますが、その他にもさまざまな理由が考えられます。
また何らかの要因により、肝臓の再生能力が低下している場合も、肝臓は悪い状況に向かう傾向があります。
血液検査値では、ALT(GPT)やALPといった肝機能値、ビリルビンやアンモニアといった検査値によって肝臓の健康度を推測することができます。
肝臓を回復させるために
2方向からのアプローチが大切になってきます。
- 肝臓の負担や、ダメージを減らしていくこと
- 肝臓が再生するスピードを改善させること
薬を使わずに改善させたいときに、この2つは重要な視点となるはずです。
薬でなかなか改善しないときでも、こういった視点からのアプローチを併せていくと治療効果が高まる可能性があります。
【肝臓回復を目指したアプローチ】肝臓のダメージを減らす
肝臓の健康を維持するためには、肝臓にかかっている負担を見つけ出し、減らしていくことです。
そのために役立つ食事や接し方の工夫を紹介します。
発酵食品の摂取
肝臓の負担は、意外にも腸内環境との関わりがあります。
腸内細菌のバランスが崩れていて、いわゆる「悪玉菌」が多い場合は、改善させる必要があります。
肉や加工肉が多めの食事をしていると、悪玉菌が多くなりやすく、アンモニアガス、硫化ガスなどの毒性のあるガスが発生しやすくなります。
それらのガスは腸から血液に入り、肝臓が処理するのですが、それが負担となっています。
「善玉菌」を増やすことが「悪玉菌」の抑制につながります。
効果的な食材のひとつとして、納豆(ひきわり納豆が良い)があります。
肝臓の健康対策として、食事にトッピングしてみると良いでしょう。
サプリメントも良いものがあるかもしれませんが、ひきわり納豆の良さはいろいろな犬猫たちで実感しています。
もし苦手なときは、代替品として豆乳ヨーグルトも使えます。
良質な油(脂質)の摂取
オメガ3と呼ばれる良質な油は、肝臓の健康に良い影響を与える傾向があります。
なかでもEPA・DHAと呼ばれる油が良く、これらを豊富に含む食材が海の魚(とくに青魚)です。
食事の油抜きをしているときであっても、少量で良いので与えてあげるべきだと考えます。
肝臓のみならず、様々な健康メリットが考えられ、できれば習慣づけて欲しいと思います。
メリットを十分に得るためには安全性や余分な成分(配合されている他の油、カプセル剤、添加物など)が心配になってくるため、食材(魚)から得たほうが安心でしょう。
愛犬愛猫のストレス管理
一見関わりのないように思えるストレスも、腸内環境バランスに関わるなどして、肝臓の健康に影響を与えると考えられます。
そのためストレス発散としての散歩、喜びを引き出す食事の美味しさといったことも、実は治療をより良いものにするために忘れてはならないファクターです。
薬の見直し、減薬
医薬品の多くは、肝臓で分解代謝されますが、なかには非常に肝臓に負担をかける薬があります。
与薬を自己判断で中止することはおすすめできませんが、思い当たるときは担当獣医師と影響について相談してみたほうが良いでしょう。
【肝臓回復を目指したアプローチ】肝臓の自己修復を助ける
以下の成分は、肝臓の自己修復力を考えていくときにプラスする価値があるでしょう。
実際に肝臓の健康サポートに役立つことが期待され、導入している動物病院もあります。
1.プラセンタの摂取
プラセンタとは動物の胎盤のことです。
各種の細胞成長因子を含み、肝臓再生の環境を整えることを期待できます。
細胞の生まれ変わりの早い肝臓の健康をサポートします。
人では肝臓治療の医薬品としてプラセンタ注射があります。
サプリメントとして与えることができますが、臓器由来の成分であるためその品質をよくお確かめください。
安全豚とも呼ばれるSPF豚の胎盤のみを100%使用したプラセンタは、ペット用として十分な品質といえます。
SPF豚を一部混ぜたものもあるため、よく確認するべきポイントです。
2.カキ肉エキスの摂取
海のミルクと呼ばれる牡蠣は、以前より肝臓を気にする方々の健康に役立ってきた食材です。
各種ミネラル、アミノ酸、タウリンといった健康成分の摂取源として知られています。
3.亜鉛ミネラルの摂取
亜鉛は生命を維持する重要なミネラルの1つであり、肝臓の正常な働きにも大きく関わります。
ミネラルに詳しい獣医師は、この亜鉛が今の犬猫たちに不足気味であると指摘しており、特に肝臓の働きにも影響を与えている可能性が考えられます。
上記の成分は同時に摂取することで、相乗的なメリットが高まると期待されています。
グラフ
実際に使用する動物病院での健康サポート評価