著:薬剤師 岡田憲人 プロフィール
上の写真はかなり大きく成長してしまった乳腺腫瘍です。
ここまで大きくなっても、転移がなければしっかり切除可能です。
乳腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
ここでは主に悪性の乳腺腫瘍、つまり乳がんについて解説していきます。
乳腺腫瘍はメス犬やメス猫に発生する、命に関わる危険ながんです。
手術で切除するのは比較的簡単ですが、再発しやすく完治の難しい病気です。
悪性乳腺腫瘍の発生率は1000頭に数頭の割合と言われていますが、もっと高い頻度で発生しているようです。
現在の乳腺腫瘍は、犬猫たちのあいだに蔓延していると言えます。
このページは、いままでに多くの乳腺腫瘍の相談を受けてきた経験と、獣医師からの情報に基づいて書きあげました。
少しでもお役に立てましたら幸いです。
乳腺腫瘍とは
写真の下の真ん中あたりのシコリが乳腺腫瘍です。
乳腺腫瘍とは、犬や猫の乳腺に発生する腫瘍です。
悪性のものは乳がんであり、非常に治りにくい危険な病気です。
他のがんと同じく、体の中から発生します。
悪性乳腺腫瘍は発生から数年かけて徐々に成長し、ある程度の大きさになると見つかります。
メス犬やメス猫にばかり発生し、オスにはほとんど発生しません。
これは乳腺腫瘍が女性ホルモン性の影響を強く受けるがん種であることを意味しています。
ちなみに若いうちに避妊手術を受けた犬猫は、あまり乳腺腫瘍になりません。
これも子宮と卵巣を摘出したことにより、女性ホルモンの量が抑えられるためです。
悪性乳腺腫瘍の特徴
悪性乳腺腫瘍は、硬いシコリを作る固形がんでありながら、とても転移しやすい性質を持っています。
リンパ節に沿って転移しやすいため、複数の乳房に同時発生することもあります。
この転移しやすい性質により、乳腺腫瘍はたびたび肺に転移してしまいます。
肺転移は悪性乳腺腫瘍の末期状態となり、有効な治療法はあまりありません。
腫瘍が転移せず、乳腺にとどまったとしても、しばしば巨大化して自壊(皮膚が裂ける)してしまいます。
強い痛みを伴い、出血による貧血の進行、がん細胞増殖による栄養失調などが起こり、適切な処置ができないと犬や猫たちは生命力は衰えてしまいます。
乳腺腫瘍の特徴をまとめますと以下のようになります。
- 乳房内に腫瘍を作る
- 他の乳房に転移しやすい
- リンパ節転移しやすい
- 肺転移しやすい
- 巨大化により自壊しやすい
乳腺腫瘍の転移について
乳腺腫瘍の転移は、実はかなり初期の頃から発生しています。
脇の周辺、足の付根付近のリンパ節には少なからず転移しているでしょう。
乳腺腫瘍は主に次のように転移します。
- 乳腺をつないでいるリンパ管を通って、別の乳房に転移する
- さらにリンパ管を通って、乳腺以外の周辺リンパ節に転移する
- リンパ液や血液を流れ、肺に転移する
「転移なし」と言われるときも、正確には「検査で確認できるほど大きい転移はない」という意味です。
検査で転移が見つかるようになるには、がん細胞数が100万個、1000万個くらい集まって腫瘍を形成したときです。
がん細胞は血管内に簡単に入り込み、しばしば肺に転移する可能性があります。
他の転移場所としては、脳転移、肝臓転移、骨転移なども考えられます。
逆に他の部位で発生したがんが、乳腺に転移してくることはほとんどありません。
ほぼ100%の乳腺腫瘍が原発性と考えて良いでしょう。
乳腺腫瘍の症状
写真は大きくなった乳腺腫瘍の一部が裂け、膿が出てきてしまっている状態です。
乳腺腫瘍の症状は状況によってかなり変わります。
初期はほとんど無症状ですが、腫瘍が成長してくるにつれ徐々に現れてきます。
肺転移を起こせば当然ながら肺に関わる症状が出始めます。
とくに肺の症状は犬猫たちに辛い思いをさせてしまいます。
初期症状
初期の頃、犬猫たちはたいてい元気です。
食欲もあり、運動量も減りません。
症状としては次の症状だけです。
- 触れてやっと分かる程度の、乳房内のシコリ
初期の頃の腫瘍(シコリ)は、見た目ではわかりません。
丁寧に胸を触ったとき、皮膚の奥の方にコリコリする塊がやっと確認できる程度です。
もし見つけたら、早めに動物病院に連れていくことをお奨めいたします。
細胞診などの検査もしくは切除してもらい、良性なのか悪性なのか確認しましょう。
進行してからの症状
乳腺腫瘍が進行するにつれ、がん細胞が増え、腫瘍が成長してきます。
胸のシコリは見た目でもわかるほど大きくなってきます。
この時点でがん細胞の数はおおよそ1億個以上。
すでに隣接する乳房や、リンパ節に微細転移(目に見えない転移)を起こしています。
考えられる症状は以下のようなものです。
- 見た目でわかるほどのシコリ
- 別の乳房にもシコリ
- 脇や足の付根にコリコリする腫れ
ただし犬も猫もまだ元気です。
食欲も運動量も落ちません。
この時点では、血液検査を受けても異常は見つからないでしょう。
基本的に、がんを一般的な血液検査で発見することはできません。
自分の胸が気になって舐める犬猫がいるかもしれません。
炎症を起こすと腫瘍が成長してしまうことがあるため、がんに対する刺激は禁物です。
つい「腫瘍を押せば引っ込むのではないだろうか」と考えてしまいます。
お気持ちはわかりますが、逆に大きくしてしまったり、悪性度を高めてしまうことがありえますので、お奨めできません。
末期症状
乳腺腫瘍の末期では、さまざまな症状が現れてきます。
巨大化した腫瘍が裂けてしまったり、増えすぎたがん細胞が毒性のある物質を分泌したり、肺転移に伴う症状が発現してくるためです。
考えられる末期症状は次のようなものです。
- 腫瘍が自壊(破裂)して、痛みが続く
- 腫瘍からの出血により貧血が続く
- 腫瘍が腐敗臭がしたり、虫が湧く
- 食欲がなくなる
- 運動意欲がなくなる
- 肺転移により咳が続く
- 肺転移により呼吸が粗くなる
- がん悪液質のために、栄養失調に陥る
自壊した腫瘍を放置してしまうと、痛みや貧血から犬猫たちは急速に衰弱してしまいます。
すべて取りきれなかったとしても、動物病院で処置してもらうべきです。
また大きな腫瘍の中心部分には栄養が届かないため、自壊する前から壊死していることがよくあります。
そして自壊すると腐った臭いを放ち、呼び寄せられたハエなどが卵を産みつけてしまうことがありますので、そうなる前に処置してもらうことをお奨めいたします。
がん悪液質とは、がん細胞の増加に伴い発現する病状のことです。
100億個、1000億個にもがん細胞が増殖すると、犬猫たちの体から大量のエネルギーが奪い取られるようになります。
がん細胞が筋肉まで分解して栄養源にしてしまうため、犬猫たちの体はまるで骨と皮だけのように痩せこけてきます。
がん悪液質は抗がん剤により一時的に脱する可能性がありますが、ここまで進行しているとき、抗がん剤の副作用に耐えるのは難しいかもしれません。
良性の乳腺腫瘍ならば安心か
乳腺腫瘍には良性の腫瘍もあります。
検査で良性の判定が出たら安心できるかと言いますと、実はそうでもありません。
良性の乳腺腫瘍であっても、どんどん大きくなってくる腫瘍があります。
また後日の検査で結果が一転して、悪性と診断されることもあります。
この理由は定かではありませんが、1つは検査精度に問題があることが理由です。
腫瘍の中には悪性部分と良性部分が混在しているケースは少なくないと考えられ、外から針を刺して腫瘍を調べる細胞診や組織診断(バイオプシー)などでは、どうしても悪性部分を外してしまうことがあるのです。
ですので腫瘍が小さくても、切除手術を受けたり、一部で実施されている色素を使ったレーザーで消してしまったほうが良いでしょう。
切除手術ならば、摘出した腫瘍を検査にまわし、良性か悪性かの確定診断もできます。
良性と悪性を見分けるコツ
確実な方法ではありませんので、参考程度にお読みください。
以下の項目に当てはまるほど、悪性腫瘍の可能性が高くなります。
- 大きさが1cmを超えている
- 腫瘍が複数ある
- 腫瘍の成長が速い
- 咳をしたり、すぐに息切れする
参考とは申し上げましたが、これらに該当するとき、じっと様子を見ているのは得策ではありません。
動物病院に連れて行き、できればベテランの獣医師に診てもらってください。
乳腺腫瘍の検査の種類
乳腺腫瘍の検査にはいくつかの種類があります。
それぞれに次のような目的があります。
- 腫瘍が良性なのか、悪性なのかを判別する
- がんがどこまで広がっているのか(転移の度合い)を調べる
- 治療に耐えられるか、体調をチェックする
- 抗がん剤を使うとき、その副作用ダメージをチェックする
実際に行われる検査には主に次のような種類があります。
- 細胞診としての針生検(ニードルバイオプシー)
- 組織診としての針生検(ニードルバイオプシー)
- 生検
- レントゲン(エックス線)検査
- CTスキャン検査
- 血液検査
それぞれについて、解説していきます。
検査を行わないこともある
人の乳がん治療では考えられないかもしれませんが、犬猫たちの乳腺腫瘍では、検査を受けずに手術してしまうケースがよくあります。
これにはいくつかの正当な理由があり、多くの場合で適切な判断です。
いくつかの理由は以下のようなものです。
- 犬の乳腺腫瘍の50%は悪性といわれる
- 猫の乳腺腫瘍の90%以上は悪性といわれる
- 検査をしなくても、見た目でほぼ悪性腫瘍だとわかる腫瘍がある
- 検査で良性となっても後で悪性化することがある
- 検査は完璧ではないため、悪性を見逃すことがある
- 検査による身体的ダメージを省略する
- 人と異なり、犬猫の美容は重要視されない
- 抗がん剤治療を行わないなら検査は必須ではない
これらの理由により、検査は省略されたり、手術で切り取った腫瘍を使って後で検査します。
人の美容は大切で、胸をできるだけ残すために徹底して検査をするべきですが、犬猫たちの場合は命を再優先にしたほうが絶対に良いです。
腫瘍内部を調べる検査
乳腺腫瘍には良性と悪性があり、それを調べるための検査があります。
針で腫瘍の内部を取り出したり、腫瘍を切り取って詳しく調べます。
このような検査は精度が高く、確定診断に利用されます。
良性だとわかれば手術を受けなくて済むかもしれませんし、少なくとも抗がん剤治療は不要です。
もう手術で腫瘍を切除することを決めているのであれば、必ずしもこれらの検査は必要はなく、省略することができます。
そうすれば検査と手術で二度の全身麻酔を1回にまとめることができます。
針生検による細胞診
針を使って腫瘍の細胞を取り出すことを、針生検もしくはニードルバイオプシーと呼びます。
その細胞を調べる検査が細胞診です。
次に紹介する組織診に比べるとかなり信頼性の低い検査方法となり、だいたいの当たりをつけるための検査だとお考えください。
ですので細胞診だけで良性もしくは悪性と言われても、あまり信用できません。
細胞診の特徴をまとめると次のようになります。
- 腫瘍を注射針で刺して、細胞を吸い取る
- 吸いとった細胞を顕微鏡で見る
- あまり痛みがなく、麻酔は不要
- 短時間で結果がわかる
- 細胞がどんな形で並んでいたのかよくわからない
- 針を刺す場所が悪ければ、がん細胞を見逃す
- がん細胞を吸ったとしても、判定できるとは限らない
正直なところ、乳腺腫瘍において細胞診はあまり重要ではない検査です。
腫瘍を刺激してしまうリスクがあるため、より精度の高い組織診を受けたほうが良いでしょう。
針生検による組織診
組織診は細胞診に名前が似ていますが、格段に信頼度の高い検査です。
細胞を吸い取るのではなく、専用の太い針で腫瘍を切り抜くようなイメージです。
この検査により良性腫瘍なのか悪性腫瘍なのか判定し、確定診断とすることができます。
以下に組織診の特徴をまとめます。
- 腫瘍に太い針を刺して、腫瘍組織を切り取る
- 組織が地層のように得られる
- 組織は検査会社に送って調べてもらうのが一般的
- 結果がわかるのに数日かかる
- 針を刺す場所が悪ければ、がん組織を見逃す
細胞が規則正しく整然と並んでいるか、不規則で乱雑な部分がないかの観察は、良性悪性を見分ける際にとても重要な情報です。
このような情報は、針生検による組織診である程度得ることが可能です。
腫瘍切除による生検
生検とは、腫瘍を切除して詳しく調べる検査のことです。
針による吸引や切り出しよりも、さらに得られる情報が多く、がんの見逃しが少なくなります。
もっとも信頼性の高い検査であり、結果は確定診断に利用されます。
以下が生検の特徴です。
- 腫瘍の内部構造を詳しく調べることができる
- がんの見逃しが少ない
- 針生検よりもずっと信頼度が高い
- 腫瘍を切り出すため、実際には外科手術である
- 全身麻酔が必要で、犬猫たちへのダメージが大きい
- 検査と手術を分けずに、まとめてしまうことも多い
なお、この生検は省略されることがあります。(前出の針生検も)
悪性か良性かを調べるまでもなく、手術すべきケースが少なくないためです。
絶対に確定診断が必要なのは抗がん剤治療をするときです。
抗がん剤治療は命を削るような治療ですから、もし誤って良性の子に投与してしまえば、逆に寿命を縮める結果になってしまいます。
がんの広がりを調べる検査
乳腺腫瘍が見つかると、がんの広がりを調べるために、主にレントゲン検査を受けることになります。
悪性の乳腺腫瘍は転移しやすい性質を持っており、特に起こりやすい肺転移を調べるために必要な検査です。
肺転移の有無のチェックは重要です。
肺転移がなければ手術で完治する可能性がありますが、もし肺転移がある場合は完治の望みがなく、手術をキャンセルしても良いからです。
多くはありませんが、肝臓や脳、骨への転移が見つかることもあります。
そのようなときも完治は厳しく、手術を受けることは必ずしも得策ではなくなります。
なお検査でみつけられるのは、ある程度成長して大きくなったがんだけです。
血管やリンパ管を流れているがん細胞はもちろん、転移が始まったばかりの小さな腫瘍は見つけることができません。
レントゲン検査(エックス線検査)
写真は左が頭側で、黒い菱型の部分が肺です。
その中に見える大きな白い塊は、腫瘍ではなくて心臓です。
レントゲン検査は、体中を撮影して調べる検査法です。
特に肺の様子を観察しやすいため、肺転移の有無がわかります。
乳腺腫瘍が見つかったら、良性か悪性に関係なく、まず受けたほうが良いでしょう。
レントゲン検査の特徴を箇条書きにします。
- 体の内部を調べることができる
- 転移の有無を確認できる
- 体の広い範囲を一度で撮影できる
- ほとんどの場合、麻酔は不要
- 犬猫たちに負担が少ない
- 検査費用が安め
- 短時間で結果がわかる
- 被曝量が少ない
- 多くの動物病院で受けることができる
多くの場合、レントゲン検査は初回受診時に行われます。
前述した生検などの検査は、結果が出るのに時間がかかりますが、レントゲン検査はすぐに結果がわかります。
ただし異常が見つかったとして、それが本当に乳腺腫瘍の転移巣なのかは判定できません。
結果はあくまで推測であることに留意する必要があります。
CT検査
CT検査はCTスキャン、コンピュータ断層撮影とも呼ばれ、体の内部を広く詳しく調べることに向いた検査法です。
レントゲン検査の上位バージョン、強化版のような検査です。
CT検査には以下のような特徴があります。
- レントゲン検査より詳しく体の内部を調べることができる
- 1回の検査で広範囲を調べることができる
- 1回で数百から数千枚撮影する
- 放射線の被曝量がとても多い
- レントゲン検査よりも10~20倍高額
- 全身麻酔が必要
- ほとんどの動物病院は実施していない
CTスキャン検査からはたくさんの情報が得られますが、その情報が役に立つかどうかは別問題です。
肺の腫瘍をより詳しく観察できたところで、必ずしも治療できるわけではないからです。
また全身麻酔によって犬猫たちにそれなりのダメージを与えるため、通常はレントゲン検査だけで十分でしょう。
CTはメリットばかりではありませんので、あまり気軽に受けるような検査とは言えません。
血液検査
血液検査によって犬猫の体調を知ることができます。
次のようなときに役立ちます。
- 栄養状態などから、手術に耐える体力があるかチェックする
- 肝機能を調べ、麻酔による危険性をチェックする
- 抗がん剤に耐えられるかチェックする
- 抗がん剤の副作用の程度をチェックする
ただし血液検査からは腫瘍の悪性度や転移の有無を知ることはできません。
血液中にがん細胞があるかどうかも一般的な血液検査ではわかりません。
乳腺腫瘍の治療法の概要
犬猫の乳腺腫瘍に有効な治療法は外科手術だけです。
唯一、手術だけが完治する可能性を持っています。
手術法にはいちおうマニュアルがあり、すべての乳房を切除する手術法が奨められています。
そのとき周辺のリンパ節も一緒に切除するため、前脚あたりから後脚のあたりまでの広範囲の切除手術となります。
肺転移が見つかるとき、抗がん剤治療が施される場合もあります。
抗がん剤治療は完治を目的としておらず、延命するかもしれないという理由で実施されます。
放射線治療は人の乳がんでは実施されていますが、犬猫に施すことはまずありません。
乳腺腫瘍の手術
写真は一列すべての乳腺を切除した猫の腹部です。
足の付根まで切除しているのは、そこにあるリンパ節を切除しておくためです。
手術は犬猫の乳腺腫瘍に対抗できる唯一の手段です。
どの動物病院に行っても、まずは手術が提案されるでしょう。
手術の最大のメリットは、時間をかけることなく一気にがん細胞数を減らせる点にあります。
この点において、手術に勝る治療法はありません。
ただ実際には完璧な手術というものはなく、必ず眼に見えないがん細胞を取りこぼしています。
そして取りこぼしが多いほど再発率は高くなるでしょう。
ですので獣医師は、腫瘍を含めてできるだけ広範囲の組織を切除し、少しでも取りこぼしを減らそうとします。
もし腫瘍だけくり抜くような手術を選択した場合、ほぼ確実に再発してしまうでしょう。
なお手術後に再発するかどうかは手術の精度というよりも、その後のケアにかかっています。
眼に見えないようながん細胞を叩くのは、本来は犬猫たちに備わる免疫力ですから、免疫を高める取り組みが大切です。
完治を狙った、広い範囲の切除手術
犬猫の乳腺腫瘍の手術では、できるだけ広い範囲を一気に切除するのが基本です。
乳腺腫瘍は残された乳腺にもっともよく再発するため、すべての乳房を切除し、一緒に近くのリンパ節も切除してしまいます。
このような大掛かりな手術は犬や猫に相当なダメージを与えますが、だからといって中途半端な手術ではむしろ犬猫の負担を増やす可能性があります。
再発と再手術を繰り返す状況に陥りやすいためです。
特別な理由がない限り、片側1列もしくは両側2列すべての乳腺を切除したほうが良いでしょう。
乳腺を残せば残すほど再発の可能性が高まってしまいます。
範囲を狭めた切除手術
範囲を狭めた切除手術も実施されています。
どうしても再発しやすくなってしまいますが、以下のようなときに検討されるでしょう。
- 良性腫瘍で、悪性化の可能性がとても低いと予測されるとき
- 年齢的に寿命が近いと考えられているとき
- 腫瘍の切除で体調が良くなりそうなとき
- 飼い主様の要望があるとき
再発を防ぐための避妊手術
乳腺腫瘍の多くは卵巣から分泌される女性ホルモンによって成長が促され、再発しやすくなります。
特別な理由がなければ腫瘍切除手術と一緒に、避妊手術(卵巣摘出手術)を受けたほうが良いです。
避妊手術は若いうちに受けないと意味がないという考えは誤りです。
ヒートがあるのでしたら高齢であっても避妊手術を受けたほうが再発しにくくなります。
抗がん剤治療
転移がある場合、手術後の再発を抑えようと、抗がん剤が提案されます。
固形がんである乳腺腫瘍には、実はあまり抗がん剤が効きません。
それでも次のような希望から抗がん剤治療が提案されることがあります。
- もしかしたら再発率が下がるかもしれない
- もしかしたら肺転移を防ぐかもしれない
- もしかしたら肺転移したがん細胞を叩けるかもしれない
- もしかしたら延命するかもしれない
抗がん剤を使うと、一時的にがんが小さくなることがあります。
ただし、ほとんどすべてのケースでがんは再び勢いづき、むしろ凶悪化したように増殖します。
その理由のひとつは、抗がん剤が免疫力を極度に低下させてしまうためです。
どんなにすぐれた抗がん剤であっても、免疫力なしには乳腺腫瘍を抑えることはできません。
抗がん剤の副作用は強烈なため、もし延命したとしても元気でいる時間はむしろ少なくなるかもしれません。
また抗がん剤治療中の犬や猫の体からは、毎日少しずつ抗がん剤が撒き散らされますので、同居のご家族の発がん率が上昇する可能性があります。
私の考えでは、乳腺腫瘍に抗がん剤を使うメリットはほとんどないと思います。
使う場合は、必ず免疫ケアを一緒に行うべきです。
乳腺腫瘍(乳がん)を抑える食事アイデア
食事とがんの関わりは明らかです。
特に乳腺腫瘍は、食事の影響を大きく受けるタイプのがんです。
その理由の1つは、乳腺腫瘍はホルモンの影響を受けやすいがんであるためです。
まず以下を基礎知識として頭に入れておいてください。
- 乳製品、特に牛乳は乳腺腫瘍を成長させやすい
- 糖類はがんのエサになる
- 肉、とくに加工肉には発がん性がある
- 脂質(油)には、がんを成長させるものと抑制するものがある
- 野菜の摂取はがんを抑制する
- 緑黄色野菜には抗がん作用を持つものが多い
- 野菜の農薬は免疫を狂わせる
- ドッグフードに含まれる添加物は免疫低下に関わる
- 過食は治癒力を低下させる
- 塩分抜きを徹底すると治癒力が低下する
これらは一般的にあまり知られていない情報だと思いますし、獣医師たちも学校で習うことはありません。
ただ、がんに詳しい者にとっては当然のことばかりです。
すべて実践しようとすると、どんな食事も怖くて与えられなくなってしまいますから、けして100点満点の食事を目指さないほうが良いと思います。
気持ち的には70点程度を目指すように心がけると良いです。
私がおすすめしている簡単な食事は、ドッグフードに私たち人間の食事をトッピングする「半手作り食」です。
上記のページは、私の知り合いの獣医師が実際にご愛犬に与えている食事です。
ここまで凝らなくても良いですから、1~2品目トッピングすることを考えてみてください。
牛乳が乳腺腫瘍を成長させる理由
私たちは小さい頃から「牛乳は体に良い」と教わってきました。
良いところばかりが強調されがちですが、実際には悪い部分も含んでいます。
とくに乳腺腫瘍を患ったご愛犬やご愛猫には、牛乳を与えないほうが良いかもしれません。
牛乳が乳腺腫瘍を成長させてしまうためです。
牛乳にはいくつかの問題成分が含まれますが、その中に女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)があります。
これらのホルモンを外部から摂取し続けることは、つまり免疫撹乱物質を体内に入れていることと同じことです。
もう1つの理由は、エストロゲンによる乳腺発達作用です。
あなたはエストロゲンの働きにより女性の胸が大きく成長し、乳腺が張ってくることをご存知でしょう。
つまり乳腺から発生し、乳腺組織の性質を持った腫瘍も成長するわけです。
牛乳の中止はもちろん、乳製品であるヨーグルトやチーズ、そして一部の栄養剤も控えたほうが良いかもしれません。
なおヒートのたびに胸が張りますが、それも女性ホルモンの作用です。
卵巣摘出により乳腺腫瘍の発生率や再発率が低下しますが、それは体内のエストロゲン量が減少して乳腺の発達が抑制されるためです。
多すぎる糖分は、がんの応援食
がんは大量の糖をエネルギーにして成長する性質を持つため、与え過ぎないように気をつけます。
ちなみにがん細胞は、正常細胞に比べておおよそ20倍くらいの糖分を必要とすると言われています。
犬猫たちの主な糖分の供給源はペットフードに含まれているトウモロコシや小麦などの穀物類やイモ類です。
白米やパンもちろん糖分の塊です。
ゼロにする必要はありませんから、食事の20%程度を目安にすると良いかもしれません。
逆に糖質制限に眼が奪われ肉や魚ばかりを与えていると、がんを抑えたとしても突然死のリスクを高めます。
ちなみに食物繊維は糖分にカウントしませんから与えていただいて結構です。
オリゴ糖はむしろ意識して与えることで免疫力に良い影響があるでしょう。
ドッグフードに肉80%野菜20%とあっても、必ず糖質制限に役立つとは言えないかもしれません。
多くの場合で成分表には糖分の記載がありませんが、すべての成分を100から引き算する値を糖分量の目安としてみてください。
肉食(タンパク食)にひそむ危険性
糖質制限をするとき肉食に偏りやすいですが、実は肉食で発がんリスクが高まることがわかっています。
特に加工肉のハムやソーセージの発がん性をWHOが公表し、新聞やテレビでご覧になった方も多いと思います。
犬猫たちにとっての加工肉とは、ドライや半生のペットフードが該当するでしょう。
少し量を減らす工夫をしてみましょう。
私はタンパク源として肉よりも魚を奨めています。
魚にもデメリットはありますが油の質がよく、陸上動物の肉よりも利点があります。
タンパクの与え方について、アルブミン(ALB)の値などを参考にすると良いでしょう。
がんを増やす油(脂質)、がんを抑える油
ペットフードに記載されている脂質とは、つまり油のことです。
がん全般に言えることですが、とくに乳腺腫瘍では油についての知識が必要です。
まず油の与え過ぎは、体脂肪を増やします。
体脂肪からは(卵巣ほどではないですが)エストロゲンが分泌され、乳腺腫瘍を成長させかねません。
肥満は人において閉経後乳がんのリスク要因です。
当然のこと犬猫たちの乳腺腫瘍にも影響があるとお考えください。
また油といっても実は多種多様で、がんに対する影響もさまざまです。
ここではオメガ3とオメガ6について簡単にお伝えします。
オメガ6という油はたいていの犬猫が過剰摂取気味で、それががんを増殖させます。
オメガ6オイルは、サラダ油、天ぷら油など、多くの植物油の成分であり、ペットフードを揚げるときに使用されています。
オメガ3オイルはEPAやDHAとして魚油に含まれています。
亜麻仁油や紫蘇油、エゴマ油にはα-リノレン酸として含まれますが、それほどおすすめではないかもしれません。
一般的な乳腺腫瘍の予後
無治療の場合
無治療の場合、乳腺腫瘍の予後は乳腺に沿って腫瘍が多発してしまう事が多いです。
腫瘍のうちの一つが巨大化して皮膚が裂けてしまう事もあります。
特に夏場は、裂けてしまうと傷口に虫が湧いてしまうことがあり、激しい痛みが伴う上に匂いが発生してしまいます。
更に無治療のままで放置されると肺転移が起こり、すぐに息苦しくなってしまい息切れをしている様子が見られるようになり、咳が出るようになります。
治療を受けた場合
全列切除、両列切除などの最も有効な手術を受けた場合でも、実際には完璧な手術というものはなく、必ず目に見えないがん細胞を取りこぼしています。
初期の乳がんでも目に見えない程のがん細胞が乳腺や体中に広がっている場合が多いからです。
再発してしまうと無治療の場合と同じような経過になってしまいます。
乳腺腫瘍の改善を目指す方法
最も重要なことは下記の2点です。
- 肺転移を防ぐ
- 取りこぼしたがん細胞の成長を妨げる
この2点を可能にする仕組みというのが、すでに犬猫の体に備わっている「免疫」です。
正常な免疫は、がん細胞がどこにあっても見つけ出して攻撃してくれます。
すなわち、免疫の力を最大化する事こそが乳腺腫瘍の改善を目指す方法となり得るのです。
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