亜鉛は体に必要なミネラルで、不足すると食欲低下の原因になる可能性があります。
生きていくためにどうしても必要とされる必須ミネラルの1つでもあるため、亜鉛不足は食欲低下だけでなく、さまざまな病気の根本的な部分に関わっている可能性もあります。
たいていのペットフードには亜鉛が含まれていますから、極端に不足してしまうことはないと考えられます。
ただ病気などの影響で、必ず安心とは言えないケースもあります。
手作り食の場合には食材選びに少し気をつけてあげると良いでしょう。
亜鉛不足で食欲が低下する理由
亜鉛が不足することによって起こる代表的な症状が食欲低下です。
それは味覚障害(味覚異常)によって引き起こされます。
味覚障害が起こってしまうと、食事の美味しさがわからなくなってきて、犬猫たちの食欲を低下させる可能性があります。
味を感じる舌がおかしくなってしまう
味を感じる舌は、実は亜鉛が多く集まる部位です。
舌の表面には味蕾(みらい)と呼ばれる味センサーがあり、正常な味覚を維持するために亜鉛が必要とされています。
そのため亜鉛が不足してしまうと、味の感じ方がおかしくなってしまうのです。
いままで美味しく感じていた食事が急に不味くなってしまい、食べるのを拒否するようになってくる。
これが亜鉛不足で食欲が低下する理由です。
すべての食事を嫌がるわけではないが、選り好みが激しくなってきた。
そのようなときは亜鉛不足による味覚異常を疑ってみるべきかもしれません。
甘いもの、味の濃いものばかり欲しがるようなときなども、少し気をつけたほうが良いと思います。
味覚障害と同時に、嗅覚障害が起こっている可能性もあります。
嗅覚障害もやはり亜鉛不足との関連性が指摘されています。
人よりもはるかに嗅覚の優れた犬猫たちは、食事の美味しさを鼻でも判断しているのかもしれません。
亜鉛の補給で改善する可能性
亜鉛不足による味覚障害であれば、亜鉛を適切に補給してあげることで改善する可能性があります。
実際に、人の味覚障害では亜鉛を投与する治療が行われることがあります。
ただ亜鉛をしっかり与えているつもりでも味覚が異常になってくることもあります。
それは病気によって引き起こされることもありますし、薬の副作用が原因になることもあります。
亜鉛不足が引き起こす、その他の問題
亜鉛は必須ミネラルであり、全身の細胞が必要としています。
そのため亜鉛不足には、健康上の様々な問題を引き起こす可能性があります。
問題の大きさは、欠乏に近づくほど大きくなると考えられます。
免疫力が低下しやすい
亜鉛不足が免疫低下を引き起こす可能性があります。
すると感染症にかかりやすくなったり、がんの成長にも関わってきます。
そのような病気の治療中や、ウイルスキャリアの子は、亜鉛を不足させないようにしましょう。
肝臓への悪い影響
肝臓はエネルギー代謝の中心的な役割を担う臓器で、その働きの中で亜鉛を使います。
また老廃物や毒素処理を引き受けているためにダメージ負荷がかかりやすく、そのため肝臓には自己を修復するための再生能力が備わっています。
そういった細胞の入れ替わりの多い組織は亜鉛を多く必要とします。
皮膚のトラブル
表皮は新陳代謝が活発で、細胞の入れ替わりが早い組織であり、亜鉛がたくさん集まっています。
亜鉛不足で新陳代謝に支障が出ると、皮膚のバリア機能に問題が出てくるかもしれません。
すると皮膚炎、アレルギーの心配がある犬猫たちでは、症状を悪化させる可能性があります。
元気、意欲の低下
亜鉛が足りなくなってくると、精神的な影響が出てくる可能性があります。
気分が落ち込みやすくなったり、意欲の低下から、活発さがなくなってくるかもしれません。
原因がわからず元気がないときは、亜鉛不足も考えてみましょう。
亜鉛を補給できる食品
亜鉛に限らず、ミネラルは体内で作り出すことができません。
基本的には日々の食事から摂っていきます。
ペットフード
多くのペットフードには食材由来の亜鉛が含まれています。
亜鉛を添加しているものもあり、通常はそれだけで必要量が補給できるでしょう。
亜鉛を多めに与えたいときは、以下のような食材をトッピングしてあげると良いと思います。
肉類・魚類・卵
手作り食をしているときは、肉類や魚類が亜鉛の補給源となります。
卵も補給源として使えます。
穀物にも亜鉛が含まれます。
一般的に、亜鉛は野菜にはあまり含まれません。
植物の細胞にも亜鉛は含まれているのですが、食べる重量に対しての亜鉛量は少なめだと言えるでしょう。
牡蠣・豚レバー・煮干し
牡蠣は、特に亜鉛を多く含む食材です。
豚レバーも、普通の肉に比べて多く亜鉛を含みます。
日頃から与えることもできますし、すでに亜鉛不足になってしまっている犬猫たちに対しても積極的な補給源として有用性が高いと考えられます。
ただ少し使いづらい食材だとも思います。
亜鉛含有量が比較的多く、与えやすい食材として、煮干しがあります。
保管性や入手のしやすなど総合的にみていくと、優れた食材と言えるでしょう。
食事に制限がある場合は、担当の獣医師に相談してからのほうが安心です。
ただし、すべての獣医師が手作り食や人の食材を与えるといった相談に対して快く応じてくれるとは限らないこと、頭の片隅に入れておいてください。
亜鉛不足の犬猫は意外と多い?
動物の栄養学に詳しい知人の獣医師から、亜鉛不足の犬猫がけっこういると教えてもらったことがあります。
実は、亜鉛は摂っていれば安心と言い切れないのです。
体に入ってくる量よりも、必要量が多いとき、体外に出ていく量が多いときに不足してしまうからです。
腎臓病、肝臓病による不足
腎臓病があると、亜鉛の排泄量が増えてしまうことがあります。
動物病院で腎不全と言われている場合は、気をつけたほうが良いかもしれません。
肝臓病では、亜鉛の排泄量が増えるうえに、亜鉛の吸収まで低下してしまうことがあります。
さらには亜鉛不足が余計に肝臓の状態を悪くするという、望ましくないスパイラルが発生することがあります。
サプリメントによる補給の有効性
亜鉛不足のままでは、表面的な治療だけを施しても、うまくいかないケースがあるでしょう。
一旦不足してしまった亜鉛を、日々の食事でゆっくり回復させるのでは間に合わないと考えられるとき、知人の先生はサプリメントで積極的に補給させています。
病気によってどうしても亜鉛が不足しやすい場合など、状況によってはとても有効な方法となるでしょう。