点滴は「塩水」—塩分制限との矛盾に気づいていますか?
「塩分を控えないといけない」と言われながら、ペットが元気をなくし、病院で点滴を受けると急に回復することはありませんか? それは、点滴にはナトリウム(塩分)が含まれているからです。
病院でよく使われる点滴のナトリウム濃度は以下の通りです。
- 生理食塩水(0.9% NaCl):ナトリウム154mEq/L
- リンゲル液(乳酸リンゲル・酢酸リンゲル):ナトリウム約130mEq/L
これは、ペットの血液中のナトリウム濃度に近い値です。つまり、普段の食事でナトリウムが不足していると、点滴をすることで急激にナトリウムが補われ、体調が良くなります。しかし、それは「回復」ではなく、不足していたものが補充されただけです。
点滴後に数日するとまた元気がなくなるサイクルを繰り返している場合、食事のナトリウムバランスを見直す必要があります。
手作り食で塩分不足になるケースが多い理由
手作り食を与えている家庭では、ナトリウム不足による体調不良が起こりやすいと考えられます。その理由の一つが、「塩分を完全に抜くべき」という誤った指導です。
誤った指導の例
- 「犬や猫に塩は不要」 → 野生動物が塩を摂取しないから不要とする説
- 「腎臓病や心臓病には塩分制限が必須」 → 必要以上に強調されることが多い
ナトリウムは哺乳動物にとって極めて重要なミネラルで、野生動物も塩なめ場(ミネラルサイト)などから必要量を摂取しています。
過剰摂取を恐れるがあまり、不足させることがあってはいけません。
実際に起こる問題
- 市販のペットフードには適切なナトリウムが含まれているが、手作り食では塩分をゼロにしてしまうケースが多い
- 塩分が不足すると、体液量が減少し、低ナトリウム血症や脱水が進行する
- その結果、食欲不振、元気消失、ふらつき、尿量減少などの症状が現れ、点滴が必要になる
ナトリウム不足が脱水を引き起こし、尿量を減少させる
ナトリウムは体内の水分を維持し、腎臓が適切な量の尿を作るために不可欠です。水分だけを与えても、ナトリウムが不足していると水分が体内に保持されやすく、それがまた水を飲みたくなくしてしまうという悪いサイクルに陥りがちです。
尿量減少による健康リスク
- 膀胱炎のリスク増加 → 尿力が減り、濃縮された尿が膀胱内に長時間留まり、細菌が繁殖しやすくなる
- 尿路結石のリスク増加 → 尿が濃くなるためミネラルが結晶化しやすくなり、膀胱や尿道に結石ができる
- 腎機能への負担 → 尿量が減ることで、腎臓が老廃物を十分に排出できず、腎機能低下を招く
「脱水=水不足」と考えがちですが、実際には*ナトリウム不足によって水の利用がうまくいかない状態」でも脱水が起こります。水分だけではなく、ナトリウム(他の電解質も併せる)を適切に補うことが大切です。
ナトリウムは水と一緒に摂ることで安全になる
水分だけでなく、ナトリウムと電解質をバランスよく補うことが重要です。すぐに実践できる方法として、以下のものがあります。
- 薄めた味噌汁(塩分だけでなく、カリウム・マグネシウムも補える)
- 鶏肉や野菜を煮込んだスープ(ミネラルバランスを考慮し、塩を極端に抜かない)
- 市販のスポーツドリンクを少し薄めて与える(すでに電解質バランスが考慮されている)
昭和の時代には犬に味噌汁を薄めて与えることが一般的でした。しかし、現在では「塩分が危険」とされ、極端に避けられる傾向があります。実際には、適度な塩分と水分を同時に摂ることが、安全で効果的な補給法なのです。
獣医師に頼るだけでなく、飼い主が観察し考えることが重要
- 「塩分制限しすぎていないか?」と疑問を持つ
- 「点滴が本当に必要なのか?」と観察する
- 「食事を見直すことで改善できるのでは?」と考える
獣医師は動物医療のプロであり、治療に詳しいことは間違いありません。しかしながら日頃の健康管理は、獣医師任せではなく、飼い主が主体的に判断することが大切です。
私がセルフケアを推奨する理由
私は、飼い主がペットの健康を自ら守る力を持つことが大切だと考えています。そうした飼い主が増えることがペットの幸せを増やすとも思っていますし、私の喜びでもあります。だからこそ本気で助言しています。
- 自分で試して、観察して、学ぶことが重要
- そうやって経験を積むことで、飼い主力が向上し、病院に頼らない健康管理ができるようになる
- 同じ結果が得られるなら、負担の少ない方法を選択するべき
- 持続不可能と思われる今の医療システム、医療費問題さえも解決したい
点滴だけに頼らず、バランスの取れたケアを
- 点滴は塩水という基礎的な知識を持つ
- 点滴が悪いわけではないが、代替法で対処できる可能性もある
- ナトリウムなしで水だけ飲めというのはきつい
- 慢性腎不全はストレスが悪化要因であり、点滴が一因になっていないかとも考慮
- 膀胱炎や結石で薬漬けなら、尿量を増やすことを一考する
- けいれんや、ALT上昇といった異常の裏にも塩分不足が潜んでいる可能性を考慮
- 水分を摂らない犬猫は、将来の健康リスクが高いと考える
- 理論ばかりでなく、事実、これまでの経験も大切にする
- セルフケアを実践することで経験を積み、飼い主がペットの健康を守る力をつける
- 病院は頼りにしていいが、任せきりにせず、自分で判断できる知識と経験を積むことが大切
犬の数が激減しているいま、猫を見かけなくなったいま、医療費がどんどん高くなっているいま、情報が氾濫するするいま、ペットに生活習慣病が蔓延しているいま、何が正しく、何が正しくないのかを見極める力が必要です。それが飼い主力です。
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