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すべての犬に肉食があうわけではない

2024年8月7日

はじめに

日本において「犬は肉食である」という話が半ば常識化しています。
犬の祖先はオオカミだから肉を多く与えるのは当然という考え方です。
その話が広まった平成のあたりから、犬の食事は肉が多くなり、高タンパク化しているように感じます。
ドッグフードだけでなく、ササミを手作りに食の中心とする飼い主さんも目立つようになってきました。

そうした中で、私は高タンパク食の危険性を認識しています。
肉中心の食事がすべての犬に適するわけではないと考えています。
犬の歴史を学ぶほど、そして日々の健康相談を通して、その考えは強固なものになっています。

犬は1万年という長い歴史の中で、数え切れない交配を繰り返し、人と同じか、もしくはもっと質素な食事に最適化されてきた動物です。
けしてオオカミと同じような食事をしてきたわけではありません。
そのお話をします。

 

50年前の犬の食事

令和のいま、犬は猫とともに最も愛らしいペットと認識されています。
家族の一員であることが常識となり、屋内で飼育することは当たり前です。

ところが50年前の当たり前は異なります。
昭和40年代50年代の犬たちは季節を問わず、昼も夜も庭や玄関先で飼われるのが普通でした。
飼育目的はたいてい用心棒、つまり番犬です。
犬の脱走を防ぐために常時首輪と鎖で繋がれていることは普通でした。

多くの犬は日常的に残飯を与えらていました。
すでにドッグフードが発売されてはいましたが、多くの家は引き続き残飯を与えていました。

残飯の内容は、当時の人の食事に準じます。
その頃の家庭料理は現在と大きく異なっており、3食とも白米で、おかずに肉はあまり使われません。
昭和40年くらいの肉消費量は現在と比べてわずか1/4程度。
お米は今の2倍多く消費しています。
つまり高炭水化物、低タンパク食です。
犬に供される残飯も同じか、さらに肉が取り除かれて野菜くずが足されたようなものでした。
※もちろん例外もあります。

 

補足「残飯と寿命」

「昔の犬が短命だったのは残飯のせいだ」とする意見は正確とは言えません。
なぜならば他に寿命を大きく下げる理由がいくつもあるためです。
理由の1つはフィラリアです。
屋外飼育で、かつ予防薬が一般的でなかったために、蚊に刺されてフィラリアに感染してしまい、若年で他界する子が多数いました。
なお平均寿命は計算上、若い世代の生存率が大きく影響し、シニア世代の影響は小さくなります。

昔は首輪を外して脱走する子が多くいました。
やはり力のある若い子に多かったと推測できます。
なかには道路で事故にあう子もいました。

他の要素として、気象変化も肉体への負担となったでしょう。
真夏、真冬、台風、大雨、大雪といった気象でも、よほどでない限りは家の中に入れません。
健康なら余裕で耐えると思いますが、体調が悪いときには少しきつかったでしょう。

衛生環境も良くありません。
犬はよく土を掘って休みますが、その近くに自らの糞尿があっても気にしません。
夏は虫が寄ってきます。
食事の一部は土に埋め、しばらくして掘り出します。
土の中で菌まみれとなり一部は腐敗しますが、構わずに食べます。

ちなみに私の家の犬も屋外飼育でした。
ときどき知らない犬が入ってきて、食事を盗み食いしていました。
猫もよく来ていました。
今考えればそうしたことも感染症のリスクを高めていたかもしれません。

現代では信じがたいこれらのことは、ほんの30年前までのありふれた日常です。
当時を知っていれば、短命の理由が残飯であるといった主張にはならないでしょう。

 

200年前の犬の食事

江戸時代、すでに犬をペットとして飼育する人がいました。
生活に余裕のある身分の高い家では、犬に十分な食事を与え太らせていたようです。
浮世絵の中にはコロコロに太った犬が描かれているものがあります。

一般庶民も犬を飼えたようですが、高貴な家とはかなりの差があったと思います。
当時は子どもの死亡率が高く、家を存続させるために女性は4~5人の子を産む必要がありました。
母も子も栄養を摂らなくてはなりません。
もちろん父も成長した子も、仕事に遊びに肉体をたくさん使い、その分たくさん食べました。
食料にあまり余裕はなかったでしょう。
ある程度の余裕があり犬を養えたとしても、家族を差し置いて犬に肉や魚を与えていたとはとても考えにくいことです。
かなりの低タンパク食で育てられていたことでしょう。

なお飼い犬とは別に野良犬もたくさんいたようです。
子どもたちは犬にまたがったり、追い回したりして遊び、犬もまたそれを楽しんでいたことでしょう。
餌やりは地域で協力していたと思われます。
もちろん子どもたちよりも劣る食事が出されていたでしょう。

 

補足「生類憐みの令」

生類憐れみの令(しょうるいあわれみのれい)は江戸時代の第五代将軍である綱吉により制定されました。
私も誤解していましたが、この法の適用範囲は広域です。
動物の保護だけではなく、人の捨て子や病人、高齢者を保護するものです。
なお綱吉の死後には廃止されています。
犬猫の扱いのみならず、肉食や魚釣り、虫の殺生にまで適用範囲が及んだために廃止を喜んだ庶民も多かったようです。

 

3000年前の犬の食事

弥生時代、農耕が始まって人々の生活は安定化します。
食料を野生動物の狩猟や、植物からの採取に頼るのではなく、田んぼや畑で生産できるようになりました。
米や麦、ヒエ、キビ、アワといった穀物、イモ類、豆類が栽培されていたようです。
犬にもそうしたものを与えていたことでしょう。

食料を備蓄する高床式倉庫が建てられたことから、人が集まり村を作っていたこと、またある程度の食料を共有していたのではないかと推測されます。
そうした村がいくつも存在していました。

十分な食料備蓄は、越冬を容易にし、人口を増やして村を強くします。
ですが価値のあるものは盗難の標的となり、村同士の戦争の原因になります。
そこに番犬を飼育する理由があったのだろうと想像します。
夜間の警戒にも適した犬は、きっと人々に安眠をもたらしたことでしょう。

村民になつき、外の人間を威嚇する賢い犬が重宝されたはずです。
人は優秀な犬を交配させ、その系統を引き継がせたでしょう。
頭が良い、目や耳が良い、鼻がきく、声が大きい、頑丈、そうした子を選び、掛け合わせたでしょう。
しかし、どんなに優秀でもオオカミのように肉を必要としていたら養うのが大変です。
穀物で育つ子は喜ばれたことでしょう。
こうした品種改良の中で、犬が犬らしくなっていったと考えられます。

 

1万年前の犬の食事

縄文時代、このころに犬が誕生したと言われています。
まだ農耕が定着しておらず、人は狩猟や木の実の採取などに頼って食料を確保していました。
オオカミは数が多く、さらに生活圏が人と重なりやすいことから、毎日のように見かける身近な存在だったと思います。

オオカミは群れで行動する動物です。
一匹で獲物を捉えることができないため、もし群れから追い出されてしまえば生きていけません。
追い出されて困りに困ったオオカミは別の群れにアプローチすることもあったでしょう。

ところで人間も集団で行動します。
私の勝手な推測ですが、オオカミからすると人間も群れとして見えていた可能性があります。
最初は距離を取って狩猟の様子を観察していましたが、空腹が限界に達し、思い切って近づいてきたのかもしれません。
近づいて狩られてしまったオオカミもいたでしょうが、なかには受け入れられるケースもあったでしょう。
そして狩猟に連れて行かれたら人間とオオカミによる混成チームの成立です。
人間の賢さとオオカミの高い身体能力が相まって、狩猟の効率が向上しました。
そうした特別なオオカミを人は手放したくありません。
手懐けるために大切な肉を分け与え、オオカミはその報酬に全力で報いました。

しかし寒くなり野生動物たちが冬眠のために巣穴に閉じこもるようになると、狩猟の効率が低下してオオカミに与える肉が不足します。
そのときに人が蓄えていた豆や木の実で冬を乗り切ることができたオオカミがいました。
そのオオカミこそが犬です。

オオカミと犬の違いは簡単に言うことができて、生きるために肉を必要とするか否かです。
逆に言えば炭水化物中心の食事で生きられるのであれば犬です。
肉無しで冬を乗り切ったオオカミが、最初の犬だというのが私の考えです。

生きられるだけでなく、子を産み、母乳を与えることのできた特別なオオカミは、いつからかイエイヌと呼ばれ、ヤマイヌと区別されるようになりました。
その後の1万年間でさらに人の生活に順応し、繁栄の道を歩み現在に至っています。

 

さいごに

長い文章を読んで頂き有難うございます。
何か役立つことがありましたでしょうか。
もし1つでもあれば幸いです。

人が長い時間をかけて交配し、品種改良してきた犬たちは、祖先であるオオカミとはまったく別の動物となりました。
外観に多少の面影を残しつつも、もはや身体の作りは肉食獣ではなくなり、人と同じような食事を受け入れます。

ペット健康相談を受けていると、ときどき長寿犬の話を聞くことがあります。
1ヶ月で数件という感じです。
前職を合わせれば10年以上です。
私は長寿のコツを知りたくて、とくに食生活には関心があるので、逆に飼い主様からいろいろ教えてもらいます。
すると人寄りの食事を与えられている子が多いことに驚かされます。
正確に言えば、最初の頃は驚きましたが、もう驚きません。
やはりそうか、という感じです。

私は犬に肉を与えなくても寿命をまっとうできると考えています。
ただし肉は美味しいですし、幸せ感に繋がりますから、ゼロにしなくて良いです。
少量を上手に与えることをお勧めします。
短期的に見れば、肉は元気や体力を向上させることも期待できます。
良い表現ではないかもしれませんが、細く長くよりも太く短くといった生き方を選ぶ場合は、おそらく肉をたくさん与えたほうが良いです。

そのうえで、もし肉をたくさん与えていたのに病気になった、病気が治りづらい、なぜだろう?と疑問に思っている飼い主様は、肉の量を減らして様子を見ると良いかもしれません。
ご愛犬にどのような食事が合うのかを、常識を1回リセットして、自分の目で確かめた真実で判断されることをお勧めいたします。


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