ペットの健康相談でお話を聞いていると、クレアチニンやBUNが高くて悩んでしまっている飼い主様がかなり多いと感じます。
自分のペットが腎不全
白衣を着た獣医師から腎不全と言われたら、誰もがショックを受けるでしょう。
肝臓とは違い、腎臓は壊れてしまうと再生しません。
でももしかして、それほど腎臓が壊れてないとしたら。
不安ばかり募らせ、山のように積み上げても、状況が良くなるわけではありません。
飼い主様は希望を持って、ご愛犬ご愛猫をよい方向に導いてあげてほしいと思います。
本当に腎臓が壊れてしまったの?
実は、犬猫たちの腎不全と、私たち人間の腎不全は、だいぶ意味が違っています。
そのギャップがかなり大きいために、飼い主様に必要以上の不安を与えていると感じることがあります。
人の場合の腎不全とは
人の腎不全は、腎臓の働きが極端に悪くなってしまった状態です。
最初は腎炎などで腎臓のろ過機能が低下して、その状態が続いていると慢性腎不全に移行していきます。
腎臓の働きが本来の30%以下に低下してしまい、回復は望めません。
そのままでは老廃物が体内に溜まって尿毒症になってしまいます。
ですので血液中の老廃物を取り除くために透析治療を受けます。
腎不全になってしまうと、カリウムが溜まって心臓に影響が出たり、高血圧になりやすくなるので、いろいろな薬を飲むことがありますが、それらは腎臓を回復させるものではありません。
それに対して犬猫たちの腎不全は?
腎不全だと動物病院で言われてしまう犬猫たちは、かなりの数にのぼると思われます。
ですが人の医療と違い、動物への透析治療はあまり普及していません。
たいていは「お薬を飲んでこれ以上腎臓が悪くならないようにしましょう。」と投薬治療が提案されたり、食事制限や点滴が提案されます。
やはり透析抜きでは、コントロールが難しい子もいます。
しかし透析治療をしていないにも関わらず状態を維持できたり、なかにはクレアチニンが改善してくる子もいます。
少し不思議に感じませんか?
その不思議さは、人の腎不全と犬猫の腎不全のニュアンスが違いことからきています。
犬猫の腎不全では、本当に腎臓の機能が30%以下にまで低下しているとは限りません。
飼い主様たちから聞いているところでは、クレアチニンやBUNなどの血液検査値から、けっこう簡単に「腎不全です。」と診断されているのが現状のようです。
回復不能である人の腎不全に対して、犬猫たちの腎不全は、病名は同じでもだいぶニュアンスが違っている。
そう考えることができます。
不安に考えすぎることが腎臓に悪い
ご愛犬ご愛猫が腎不全と診断されたら、だれもが心配してしまうでしょう。
将来のことを考えて不安になります。
血液検査を受けることが怖くなってしまうかもしれません。
なぜ?どうして?
そう考えることは、けして悪いことではありません。
なぜなら前向きな対策につなげるために、もしかすると良くなかった日常習慣の見直しに繋げていけるからです。
ですが、不安が不安を呼ぶスパイラルに落ち込まないようにしましょう。
これは単なる気持ちの問題ではありません。
飼い主の不安が、ご愛犬ご愛猫に伝わり、彼らを心配させ、ストレスになってしまうことがあるためです。
ストレスは、腎臓を悪くする要因のひとつとして知られています。
健康な子であってもそうですし、とくに腎機能の低下が疑われるときはストレスをかけすぎない生活が大切になってきます。
彼らの目を見つめて、悲しさを伝えてはいけません。
動物は自分が腎臓病だということを知りませんし、腎臓が何であるかすら知りません。
どうして悲しい顔をしているの?僕がわるいの?
賢い子はそんなふうに考えてしまうかもしれません。
心配な状況で、もし伝えるならば「大丈夫、私がきっと良くしてあげる!」だと思います。
その根拠があるかどうかが大切なのではありません。
言い切ってあげることで、自信を見せ、彼らに安心感を与えてあげることが大切です。
人の腎不全とは異なることがありますから、実際に良くなってしまう可能性はあります。
こういった考え方がどこまで治療に役立つか、数値化することはできません。
しかしながら、治療にプラスの影響があることはまず間違いありません。
ペットとの暮らしをより豊かにする、前向きな考え方だとも思っています。
「お前すごいな!クレアチニンちょっと下がってるぞ!」
そう言えることを目指しましょう。
将来の楽しみにしてまいりましょう。