犬の祖先がオオカミで、犬も本来肉食動物であり、肉だけ与えれば良い。
そんなふうに言われることがあります。(オオカミ起源説以外にも諸説あり)
しかし実際には、ドッグフードの原材料として野菜や穀物類が使われています。
また完全手作り食の飼い主様や、一部手作り食にされている飼い主様の中には、肉だけでなく野菜や穀物を使って上手に健康を維持していらっしゃる方もいます。
「犬は肉食に近い雑食」とも言われます。
なんとなく複雑に感じますけれど、ようは雑食であると考えて良いと思います。
とくにペットとして飼われている犬は、肉だけで健康を保つことは難しいでしょう。
そのあたりを少し深く考えてまいります。
肉だけでは、犬の健康管理が難しい理由
自然界における肉食動物(肉食獣)は、生きた動物を捕らえて食べ、その血肉を栄養源としています。
血液ごと食することで、タンパク質や脂質(脂肪分)だけでなく、塩分を始めとしたミネラル分などを得ることができます。
腸の内容物からは、炭水化物やその発酵物も摂取することが可能です。
そのため、意外と栄養バランスが悪くありません。
ペットとして飼われている犬の場合はどうでしょうか。
家庭で犬に肉を与える場合、それはたいてい筋肉の部位のみであり、いわゆる精肉です。
タンパク源や脂肪源としは優秀ですが、他の栄養素が不足気味です。
トッピング食材として人気のささみ肉ばかりにしてしまえば、脂肪分も足りないでしょう。
そのような視点から考えていけば、精肉だけの偏食では健康管理が難しいと言うことができます。
何か栄養の欠乏症や、それにともなう病気になりやすいでしょう。
自然界では糞も健康食の可能性
犬の中には食糞といって、うんちを食べてしまう子がいます。
この食糞行為は、人が見ていてあまり気持ちの良いものではありません。
なかなか止められない子も少なくなく、飼い主様を困らせてしまうことがあります。
食糞は異常行動と考えがちですが、遺伝子が記憶する本能的な行動と考えることができます。
実際、野生動物に食糞行動が見られています。
動物の糞には、未消化の栄養が含まれているだけでなく、発酵食品としても意味を保つ場合もあるかもしれません。
消化が途中の繊維質も含まれ、食べた動物の腸内環境を良くする効果があると考えられます。
なお犬はセルロース(食物繊維)を分解できないとされますが、腸内の細菌が分解してくれるために、栄養源となりえます。
私の飼っていた愛犬は、よく一緒に自然の中を散歩していましたが、シカなどの野生動物の糞に興味津々でした。
もしかしたら見てないときに少し食べてしまっていたかもしれません。
その後もまったく元気でしたけれど、衛生的にどうなのかと言われると心配があります。
野生動物からの感染症もありえますから、食べないように気をつけましょう。
犬は野菜からも栄養を吸収できる
セルロース分解酵素を持たないとされる犬であっても、腸内細菌の力を借りれば話は別です。
セルロースの細胞壁で守られている植物の栄養源も吸収できるでしょう。
ですので手作り食に野菜を加えることが、あまり意味のないことだと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そうとは言えません。
もちろん大腸の長さから考えて、草食動物や人に比べれば、犬は植物性食品の消化吸収が苦手でしょう。
それであっても、野菜からある程度の栄養源を取り込むことはできると考えます。
またセルロースを分解してくれる細菌は、セルロースを栄養源として欲しているとも言えます。
善玉菌が多くて、良い腸内環境と呼ばれる状態を作るためにも野菜は有益でしょう。
葉物野菜に限らず、芋類などの根菜も組み合わせると良いでしょう。
バリエーションが増えて、さらにご愛犬を楽しませるかもしれません。
人も食生活が変わってきた
原始時代、まだ穀物の大量栽培ができなかったころ、私たちの祖先は狩りを主体とする食生活でした。
道具がまだ進化していない時代は、硬いものを粉砕したり、調理することもできなかったと考えられています。
地域や気候によって食生活の違いがあったでしょうが、現代の我々とは大きく異なる食生活であったことは間違いありません。
当時の食生活が、現代人を健康に、長生きにするでしょうか。
コメを主食とする日本食が健康食とされるように、必ずしも祖先の食生活が理想であるとは言えないようです。
雑食であると考えて、ぜひ楽しみましょう!
腸内細菌がいてくれるおかげで、犬は雑食で健康を保つことができて、人に近い食事を楽しむことが可能です。
もちろん完全に同じではなく、味付けにしても薄めが良いでしょう。
塩分に関しても、私たち人間よりも少なめにしたほうが良いと考えられますが、全ての哺乳類にとって塩分は必須です。
著しい塩抜きは健康を損なう可能性がありますし、場合によっては食事の楽しみを半減させてしまうかもしれません。
炭水化物は腸内環境にとって嬉しい栄養素だと考えられます。
ひとえに炭水化物といっても砂糖のような糖質もあれば、オリゴ糖、食物繊維もあります。
一緒くたにして抜いてしまうと腸内の善玉菌を減らしてしまうかもしれません。
糖質が多すぎる食事には健康リスクも考えられるのでおすすめいたしませんが、炭水化物を頭ごなしに悪者扱いしないようにしましょう。
味のアクセントにリンゴを少し入れるといった工夫は、すごく良いことだと思います。
私たちよりも、きっと犬はもっと食事を嬉しいものだと考えていると思いますし、美味しくあるべきです。
できたら飼い主もぜひ楽しい気分で、ご愛犬の食事を用意してあげましょう!