こんなに薬は必要なのか

2026年7月14日

薬の本質的な理解

はじめに

薬は、必要な人には必要です。ただ、必ずしも必要ではない飼い主さんもいる。この記事では、そのあたりを一度整理してみたいと思います。

「薬」という字は、草かんむりに「楽」と書きます。あまり努力をせずとも、体を楽にしてくれる。それが薬の持つ、大きな役割の一つです。

ただし、たいていの薬は対症療法です。辛い症状や心配な症状を和らげてはくれるものの、その原因までは取り除いてくれません。つまり、薬だけに頼っている人にとって、薬は手放せないものになります。一方で、原因そのものにアプローチしようとする人にとっては、薬は必ずしも必要とは言えなくなる。たくさんの薬を、何年も使い続けることになるかどうかは、ざっくり言えば、この違いから生まれているのです。

薬と食品・サプリメントの違い

薬とは何か。まずはここから整理しておきたい。

薬は、国の規制下にある物質であり、多くは化学合成物質である。保管、調剤、投薬には、それぞれ資格が求められる。人体への影響が大きいからこそ、一定の条件下でのみ、使用が認められている。薬の効能および用法とは、この条件そのものに他ならない。「効くから薬」という認識が、薬のもつ危険性をぼかしてしまう。

多くの化学合成物質は、人体に対してさまざまな悪影響を及ぼすため、投与そのものが禁じられている。もう少し丁寧に言えば、何らかのメリットがあったとしても、健康被害のリスクがそれを上回ってしまうために、毒として括られているということである。しかし中には、特殊な条件下においてのみ、メリットがリスクを上回る物質がある。それを国が認可して初めて、薬と名乗ることができる。

一方、食品やサプリメントは効能を謳えない。ただこれも正しく見るのであれば、国がそこまで厳密に効能を決める必要がない、特定の使用条件を設けて制限する必要がないためである。食品類の多くは植物や動物、菌類といった生物に由来する。石油などの無機物から合成されるものではない。

副作用のこと

薬の「効果」とは、その薬が持つ数ある作用のうち、ほんの一部分に過ぎない。実際には、体に対してさまざまな影響を及ぼす作用を有する。その作用のうち、効果以外のもの、望まない反応のことを副作用と呼ぶ。つまり効果と副作用は、いわばセットなのである。

なお、副作用は、用法用量をしっかり守っていても発生するものである。用法用量を逸脱して、特に過剰に使用した場合に発生するものは、副作用ではなく中毒と呼ぶべきものだろう。「正しく使っていれば副作用は起きない」は、完全に違う。

相互作用のこと

相互作用とは、2つ以上の薬、あるいは食品類を併用することによって生じる、望まない反応のことである。薬を単独で使用した場合の副作用に比べて、より重大な問題につながるケースがある。危険な組み合わせについては、注意喚起が行われていたり、併用そのものが禁忌とされていることも少なくない。

多剤併用でのリスク予想の難しさ

3剤以上の薬を併用することを、多剤併用と呼ぶ。2剤の併用に比べて、相互作用の予測は一気に難しくなり、潜在的なリスクが上昇する。

実際、2剤による相互作用については、添付文書にもある程度の記載がある。しかし3剤以上の組み合わせになると、その相互作用について書かれた記述は、ほとんど存在しない。とはいえ、現場では3剤以上の併用は、決して珍しいことではなく、当たり前に行われている。4剤、5剤と増えていったとしても、それだけで必ず問題が起きるわけではないことは、付け加えておきたい。

そのうえで言えるのは、薬の数が増えるほどリスクは増加する。同時に、何か不調が起きたときに、その因果関係を特定することが極めて難しくなる。何が原因なのか分からないまま、見過ごされているケースも、決して少なくないだろう。

薬のリスクを下げるために

薬のリスクを減らす図解対症療法とは、体を騙し、まるで健康になったかのように見せる治療のことである。現代における対症療法の大部分は、薬物療法によって成り立っている。薬を止めれば、抑えられていた問題は再び現れてくる。だからこそ、なかなか薬を止めることができない。

ただし、対症療法そのものを否定したいわけではない。強い痛みが出ているとき、命に関わる状態のときは、原因を突き止めるより先に、まず今の苦しみを取り除くことが最優先になる。そうした場面では、対症療法こそが最善の選択になる。

そのうえで、である。原因を探る余地があるとき、日々の生活の中でじっくり向き合える状態であるときには、話が変わってくる。ここで別のアプローチによって、根本的な問題そのものに対策ができれば、薬が1剤減るだけ、あるいは量が半分になるだけでも、リスクは大幅に軽減できる可能性がある。

現代病の根源は、生活習慣に関わっていることが多い。とりわけ、偏った情報に基づいた偏った食生活が長く続いたとき、それがやがて体の歪みとなって発現する、という見方もできる。もちろん、すべての病気がこれで説明できるわけではない。先天的なものや、すでに進行してしまった病気もある。それでも、生活習慣が関わる余地のある病気であれば、根本的なアプローチの現場は、病院ではなく家庭になる。飼い主さんが治療に参加することの意味は、実はとても大きいのである。

副作用情報の収集は、自分でやるしかない

薬剤師の目から見ても、薬の副作用をすべて説明してくれる動物病院は、ほとんどないと言っていい。限られた診察時間の中では、物理的にも不可能である。

問題なのは、数ある副作用の中から、比較的軽微なものばかりが伝えられ、それだけで飼い主さんが安心し、納得してしまうことにある。重大で、時に致死的な副作用を持つ薬は、決して少なくない。しかし実際には、そうした重大な副作用よりも、比較的軽く、頻度の多い副作用ばかりが説明されがちである。

厚生労働省や農林水産省が管轄する情報サイトにアクセスしてみてほしい。そこでは、薬の正式な添付文書を入手することができる。そこには、病院の診察室では聞ききれなかった情報が記載されている。そして多くの飼い主さんが驚く。「こんなに薬が必要か」に本当の答えを出すためには、まずは正しい情報を手に入れること。そしてメリットとデメリットの比較、自身の価値観とのすり合わせ、そのうえでの評価が必要だと言える。

まとめ

薬は、必要な人には必要です。それを否定するつもりはありません。ただ、たくさんの薬を、長い年月にわたって使い続けることに多少なりとも疑問を抱いているのであれば、一度立ち止まって、その必要性を見直してみる価値はあると思います。

もし今の治療内容に不安を感じることがあれば、まずは信頼度の高い情報を集めましょう。私たちに相談してもらって構いません。

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