ご愛犬の健康のために、レバーを与えている方はけっこういらっしゃると思います。
事実、レバーは「がん予防のビタミンA」や「貧血改善のヘム鉄」を多く含み、健康に役立つ優秀な食品です。
ただしタンパク源として肉のように毎日大量に与えるのは、もしかすると良くないかもしれません。
ビタミンAが体に蓄積しすぎた場合、中毒を起こす可能性があるためです。
ビタミンAによる中毒について
まずビタミンAは大きく2つに分けることができます。
これはぜひ覚えておきましょう。
- 脂溶性ビタミンA(レチノール)
- 水溶性ビタミンA(主にβ-カロテン)
中毒になるのは、脂溶性ビタミンAのレチノールです。
脂溶性は油に溶けやすいという意味で、体内に蓄積しやすいという性質を持ちます。
かたや水溶性ビタミンAのβ-カロチンは中毒の心配がありません。
もし犬に与えすぎたとしても、利用されずに排泄されてしまいます。
詳しくはこちらのページをご参照ください。
レチノールを高含有する食品の代表がレバーです。
レバーの中でも、鶏(鳥)レバーと豚レバーです。
- 鶏レバー100gあたり14000μg
- 豚レバー100gあたり13000μg
ちなみに牛のレバーは桁1つ少なく、100gあたり1100μgを含むに過ぎません。
問題は、これらの食品で中毒量に達するかどうかです。
それには犬のビタミンA上限量を知る必要があるのですが、良い資料がありません。
ですので人の上限量を参考に、体重換算で犬の上限量を推測するのが良いでしょう。
私の薬剤師的感覚からして、それでだいたい大丈夫です。
ビタミンAの上限量
日本人の成人男性のビタミンA上限量はおおよそ1日2700μgですので、これを元にしてみましょう。
人の体重を60kgとして、犬の体重を10kgとしたとき、1/6量にすれば良いだけです。
するとこうなります。
体重10kgの犬が毎日食べていても大丈夫だろうという鶏レバーの量
約3g
かなり少ないですね。
日本人のために厚生労働省が発表した数字に基づいていますので、相当に慎重な数字です。
ここで言う上限量とは、耐用上限量のことで、ほぼすべての犬が健康を害することがないという量です。
そして習慣的に与えているときの量ですから、週に1日だけ140g与える場合は、まったくセーフといえます。
相当に慎重な数字なので、この2~3倍でもほとんどの犬は大丈夫でしょう。
好きな鶏レバーを取り上げてストレスになる方が体に良くありません。
ここまでは習慣的に続けていた場合のことです。
次に一度に与えられる限度量についてお知らせいたします。
犬のビタミンAの急性中毒量
一気に中毒を起こしかねないビタミンAの量についてお知らせいたします。
必ず中毒になる量というわけではないので、さほど心配せずにお読みください。
私の計算では、体重10kgの犬にビタミンA(レチノールとして)50000μgが限界なので、次の通りになります。
体重10kgの犬に一度に与えられる鶏レバーの限界量
約360g
上記の限界量を突破したからといって、すべての犬が中毒に陥るわけではありません。
ただ急性中毒は危険で、中毒死の可能性もあります。
また前述のとおり、ビタミンAには蓄積性があります。
350gなら大丈夫だといって、2日連続で与えてしまうと危ないかもしれません。
さらに360gという限界量はいくつかの要因によってさらに低くなります。
たとえば肝臓病、腎臓病を患っている犬の場合、もっともっと少ない量が限界になるはずです。
限界量が300gに下がるかもしれませんし、200gに下がるかもしれません。
いずれにしても上記疾患がある場合、無理なチャレンジはお奨めいたしません。
どうしてもビタミンAが欲しいときは、ニンジンを利用することも考慮してみてください。
ニンジンのビタミンAは、中毒を起こさないβ-カロテンです。
お時間がございましたら、こちらのページもご参照ください。
貧血の改善(鉄分補給)を目的にするとき、牛レバーにしたり、豚の赤身肉に変更してみてはいかがでしょうか。
ちなみに植物性の鉄分は非ヘム鉄で性能が悪く、貧血改善作用はだいぶ劣ると思います。
おわりに。